アーモンドフィッシュ

時をかける少女のアーモンドフィッシュのレビュー・感想・評価

時をかける少女(1983年製作の映画)
4.0
大林宣彦監督の尾道三部作の二作目、原田知世版の「時をかける少女」を観ました。三部作の中では一番有名なんじゃないでしょうか。

仲里依紗バージョンは前に観てたので、どんな感じかなーって思って観てみたら、これがもう全然違う作品でした!原田知世演じる芳山和子が、仲里依紗版では主人公のお母さんとして出てくるんですよね。そして、時間の扱い方も全然違って、原田知世版はタイムリープで同じ時間を繰り返すタイプ。対して仲里依紗版は完全なタイムスリップもの。この違いがすごく面白い。

内容としては、筒井康隆先生らしいSF要素と青春の融合が素晴らしくて、最後のシーンは本当に胸に刺さりますね。恋と別れと成長が重なって、青春映画としての本質が凝縮されているんです。原田知世版も仲里依紗版も、形は違えど「時間を操る力」と「大切な人」の関係について、同じような切なさで描いていて。結局、人は時を越えられても、心は正直だよねっていう。ラストで観客の胸に残る余韻まで、どちらの作品も絶妙です。

それから、やっぱり松任谷由実の主題歌がいいんですよね。原田知世の歌声の音程のズレ(ごめんなさい)が、かえって主人公の不器用な青春をすごくよく表現していて。のちにユーミン本人がセルフカバーしたり、いきものがかりもカバーしてるんですけど、やっぱり原田知世バージョンの持つあの特別な雰囲気には敵わない気がします。

ただ、ちょっと残念だったのが、原田知世と深町一夫役の高柳良一の演技なんですよね。特にふたりの掛け合いのシーンで、セリフが棒読み気味というか、なんというか...青春映画なのに感情の起伏が薄くて。せっかくの甘酸っぱい展開なのに、ストーリーに入り込めない瞬間があったんです。まあ、時代性もあるのかもしれないけど。でも、それ以外は本当に素敵な作品!特に学園生活の描写とか、尾道の美しい風景とか、あの時代特有の空気感がバッチリ出てて。演出も丁寧だし、SFと青春の配分も絶妙。棒読み演技が気になっちゃうのは、それだけ作品の質が高いってことなのかも?

他の「時をかける少女」も気になってきちゃった。8人くらいの人が演じてるらしくて。特に南野陽子バージョンがあるって聞いてビックリ!実はレアで、なかなか観られる機会がないみたいなんですけど、動画が手に入ったらぜひ観たい作品の一つです。

尾道三部作で私が観てないのは「転校生」だけになったんですけど、これが今すごく観たいのに配信もレンタルDVDもない状態で。大林監督の尾道三部作、ここまで観てきて最後の一本だけ観られないのも歯がゆいし...新品で買うしかないんです。ただ、いつもこういう時に限って買った途端に配信が始まるんですよね。

という訳で、もう少し様子見してみようかと思います