悪魔の毒々クチビル

トイレの花子さんの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

トイレの花子さん(1995年製作の映画)
3.7
「どういたまして」

転校生の女子がトイレの花子さん疑惑をかけられるお話。


1995年公開の名怪談「トイレの花子さん」を題材にした作品です。
確か小学生の頃にVHSでレンタルして一度だけ観たことがあったんだけど、kanacoさんのレビューで思い出しました。ありがとうございます。
実は当時は全然好きじゃなかったんだけど、その反面今でもちゃんと覚えているシーンがいくつかある作品だったので、今観ると違う感想かもなと思いまた観たくなりましたよ。
ただ今作、DVD化はされておらずVHSがプレミア価格で発売されている状態でして。
うわマジかー、って思っていたら最近U-NEXTに追加されていて超ラッキー!!流石U-NEXT!!あ、一応アマゾンプライムでもレンタルor購入が出来ます。

で、改めて観ると確かに粗い部分はあるんだけど、これがまた結構良かったです。
まず当時何が期待外れだったかって、これ花子さんほぼ出てこないんですよね。怪現象と声だけで、姿は一切現さないです。
寧ろ今作のホラー要素はどちらかと言うとスラッシャー映画的な側面の方が強いです。
だからあの頃は内容云々の前に「えー、花子さん出てこないじゃーん」と言う肩透かし感が先行していたのもあり駄作認定していたんだけど、これはこれでキツい作品でした。

と言うのも、今作では主人公の通う学校付近で児童を狙った殺人事件が多発しており、子ども達は花子さんの仕業なのではと噂している状況。
そんなタイミングでヒロインの水野冴子が転校してきたもんだから、すぐに花子さんの疑いをかけられ苛められるんだけど、水野は本当にただ皆と仲良くなりたいだけの良い子なので観ていて中々辛い。
周りに避けられながらも自ら歩み寄ろうとした結果、それも裏目に出る始末で、そこから更に学校で飼っていたヤギの首が切り落とされているのを目撃してショックで声が出せなくなるという追い討ちまで。一体この子が何をしたって言うんだ……
そんな状態になっても登校拒否にならず、誤解を解いて皆と友達になりたがる姿勢が逆に観ていて辛いのよ。
ホラー的な怖さよりも、子ども特有のストレートな心理が苛めに繋がる厭な雰囲気マシマシの内容なんですよね。
「多数決だから、民主主義なんだぜ」

そんな中、クラスメイトで児童会長の拓也は唯一水野を庇っていて彼女の支えになっていました。
その時の黒板を使った会話シーンは青春チックな微笑ましいやり取りで、このシーンは見直すまえから覚えていたくだりの一つでもあります。
と言うかこっちは覚えていて、ヤギの頭部が切り落とされているって子どもには割と衝撃だったであろうシーンは完全に忘れていたのですがそれは。
ただその後、花子さんのせいで結局拓也も水野を拒絶してしまってまたもしんどい展開に。何しとんねんお前!
逆に拓也の妹のなつみだけは水野を信じてくれていましたが。
中盤とある出来事が起きて、なつみが慌てて水野の教室まで走っていく場面があるんだけどそこで水野がなつみにお礼を言うくだりで、声を発せられないからゆっくり分かるように「ありがとう」って口の動きで伝えているのを観て泣きそうになりました。
水野役の河野由佳は良い演技していたと思います。

因みになつみ役は前田愛なんだけど、妹の前田亜季も最後ちょこっと出てきていました。まだ「学校の怪談」に出る前ですね。
ただ栗山千明はどこにいたのか分からなかったです。
担任の先生には大塚寧々。「サイコメトラーEiji」の志摩さんですよ。これまたむっちゃ懐かしい…!
拓也となつみのパパは豊川悦司でしたし、なつみのクラスメイトのパパは竹中直人と、大人は豪華な顔ぶれでしたね。

また、平成初期の小学校の描写なんかが凄く懐かしくて勝手に悲しくなりました。きゅ、給食当番…
厳密に言えば俺は今作公開当時はまだ保育園にすら通っていませんでしたが、それでも年代的に共感出来る要素は良い面でも悪い面でもあり、色々と刺さる作品でした。
そもそもジュブナイル系は好きなんだけど、観てきたのはどっちかと言うと海外の作品の方が多かったので、改めて邦画が故のノスタルジーな演出がしっかり刺さりました。

話を内容に戻しますが、終盤これまた水野に地獄みたいな展開が待ち受けていて遂には殺人犯にまで狙われますが、この犯人が良い意味でクソキモい。
身分も動機も一切明かされず、ただ標的を見つけたら一心不乱に鎌を振り回す変態キチGuyで、たまにぶるぶる震えながら叫んでいる辺り多分クスリやってるんじゃないかと思うんだけど子ども向け映画とは思えない存在感でした。あとデコが完全に禿げあがっているのに、鏡で髪型直す所も怖い。
そしてスラッシャー映画よろしく、不自然な迄に神出鬼没。ここは流石に違和感あるレベルでしたが。
この頃には拓也も水野を守るために殺人鬼に立ち向かっていて、馬乗りになってぶん殴っていたりと頑張っておりました。ちゃんと鎌を取り上げて遠くに投げ捨てる冷静さも評価したいよね。
その後は拓也パパもぶん殴ったりと、親子でそれぞれ立ち向かう流れも良かった。
ここで初めてちゃんと花子さんが動きますが、これまた意外な展開なんですよね。
こんな能力発揮する花子さん映画って、今作くらいじゃないかって思う。
こういう事してくれるなら何で中盤拓也を脅かして水野との仲を気まずくさせたのかと疑問ですが、流石に花子さんも水野に同情したのだろうか。
そこからのあのラストも、当時ちょい怖ホラーだと思って観た俺には別の意味で衝撃でしたが、今観ると「うんうん、まぁ言いたい事がない訳ではないけど良かったね」と、胸を撫で下ろしました。良いエンディングだったと思う。

断片的に覚えているだけで第一印象も最悪でしたが、当時とは真逆の感想になるタイプの作品で改めて観て良かったです。