面白かった。ひとりの大柄で強面の男がある映画監督を訪ねて来る。本人は不在で居合わせた幼い娘に伝言を残す。自分は若い頃警察官だったが、ある日活動家だった監督に刺されて職も辞し、今は俳優になりたいのだと…という物語。監督はイランの映画一家として知られるマフマルバフファミリーのモフセンマフマルバフ。自身の実体験がベースになっていて監督と警官は本人が演じているのだろう。(警官は役者かも)冒頭オーディションの攻防の場面から笑える。現実をベースに映画内で映画を撮っていく構造はキアロスタミ作品を思い起こすが、個人史とドキュメンタリーとフィクションの絶妙な掛け合わせと畳み掛けるような語り口は実に見事だった。ラストカットの切れ味もすごい。