ラブコメ3大都市伝説といえば、
①食パン咥えて「遅刻遅刻!」
②「顔、赤いぜ?」からのおでこコツン
そして
③「私のために争わないで!」
であろう。まさか21世紀にもなってこれをマンキンでやるような作品が…あったのです(エェ~ッ!:観客SE)
ガチで言う(※1)からね。笑い転げましたよね。
このシリーズは、第一作である前作の評でも「ガールズの理想が見える作品」と書いたけれど(※2)、今作に至っては更に加速。
成功にかまけることなく、前作の時点でもし足りないものがあったとすれば何か?と、作り手は自問自答したのだと思う。そして、辿りついた答えはめちゃめちゃシンプルだった。すなわち、
《マッチョ》
である。
ヴァンパイアであるエドワード(R・パティンソン)は、「色白・ミステリアス・年上(ていうか不死身)」だ。
そこに、ライバルポジションとして満を持して狼男族のジェイコブ(T・ロートナー)を投入。彼は「ネイティブアメリカン系・純朴マッチョ・年下」ということで、わかりやす過ぎるほどエドワードと正反対だ。
そんな彼らは当然どちらもベラ(K・スチュワート)にぞっこんであり、両極から引き合った末に冒頭の③に至るというわけだ。
このジェイコブの所属する狼男族はホモソーシャルっぽい部族カルチャーのもと群れているのだけれど、ジェイコブ含め異常に上裸率が高い。体感8割上裸短パンのマッチョ軍団が周囲を占拠しており、前作に足りなかった筋肉成分を慌てて回収しているかのようだ。
そんなガールズドリームを丸ごと叶えんとする今作、欲が祟ったのか、脚本はもはやアヴァンギャルドと言って良いような展開となっている。あるいは『ハリー・ポッター』シリーズとかと同様、原作ノルマに追われていたのかもしれないけれど、くっついたり離れたり追いかけたり逃げたり助けたり助けられたり…と単純にやることが多くてさっぱり落ち着かず、キャラが優柔不断か支離滅裂に振り回されているのだ。
結果どうなったか…というと、どうにもベラがメンヘラビッチに見えてしまうこととなった。
なんやかんやあって、今作の序盤でベラとエドワードはいったん別れる展開となる(これもかなり無理矢理なんだけれど)。激病みするベラ、その傷を癒すのが実直・誠実・純粋なジェイコブの存在なのだ。しかしあくまでベラの本命はエドワード、散々ジェイコブに期待を持たせた挙句、肝心なところで身をかわす。…見てられへんて。
確かにジェイコブは誰が見ても桜小路くんポジションの当て馬(いや狼なんだけれど)だし、わたしも前回(※2)「ガールズのOKサインは永遠の謎」的なことを書いた、書きましたけれども、たくましい裸の胸板に触れて「ジェイコブだから暖かいのよ」とかまで言っておいて何もナシ、は流石にあんまりじゃあなかろうか。
その他、口論になれば話をすり替え(これは対エドワードでも同様)、エドワードやジェイコブだけでなく彼らの一族まで振り回し…と、顔面がK・スチュワートでなければ即・昇竜拳案件である。映画史上の地雷ヒロイン列伝筆頭といえばサム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズのMJ(K・ダンスト)が思い浮かぶところだったけれど、更新する勢いだ。
とはいえ、あくまでこれは一メンズビューから見た景色。多くのガールズからすれば、世界が私を中心に回っている!かのような三角関係展開はそれだけで十分たまらないのであろう。そのひとつの証拠として、今作もまた興行的には大成功をキメている。
今作の中でも一応の起承転結があって一区切りはつくものの、無数の課題は続く3作目『エクリプス』へ持ち越しとなる。
その中心となる「ベラはヴァンパイア化するのか否か」はそろそろ決着がつくのだろうか。そして、ベラは人間の寿命の前に脚本の皺寄せから無事に解放されるのか。まだまだ戦いはこれからだ。
>>To Be Continued...
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※1:先日の『水曜日のダウンタウン』にあった「『子供がまだ食ってる途中でしょうが』リアルに言わせることも可能説」を思い出す。目の前にシチュエーションが100%揃えば、ベタな台詞でもつい口にしてしまうのではないか、という検証だ。今作のベラも、あかつと同じ心境だったのかもしれない。
※2:https://filmarks.com/movies/10561/reviews/185522154