目黒シネマにて『百年の夢』と2本立てで視聴。
時は1953年。反ユダヤ人主義運動やスターリンの死にまつわる激動の時代を生きた医師、クレンスキー少将を、彼の子供が回顧する……
ゲルマン色がゴリッゴリの作品。
相変わらずの混沌っぷり。
ゲルマン作品お馴染みの奇声、怒声、暴力は健在。
パワフルでエネルギッシュな映像に圧倒され続ける2時間半。人物は皆デタラメな動きばかりだし、言ってることもチンプンカンプン。
混沌とした映像の中にも繊細な作り込みを感じる。流石ゲルマン監督。人物やカメラの動きを考え抜かれた映像は、観ていて唸ってしまう。
メインキャラクターがフレームアウトした後でも、画面に余韻を残すのが特徴的だった。
……ラスト、スターリンも死に、家族も職も全て捨てて新たに生き返りたいクレンスキーは汽車に揺られどこかへ。
収容所帰りの人は叫ぶ。
「リバティ!自由だ!」
乗り合わせた人は言う。
「ヨットは帆を張った方向に進むだけだ」
カメラをキッと見つめ、頭に酒入りコップを乗せて遊ぶクレンスキー。画面は暗転し、彼はただ一言つぶやいてこの映画は終わる。
『くだらねぇ』
…結局のところ、スターリンが死んでも何も変わらないのだ。ヨットが風に流されるまま進むように、世の中はなるようにしかならない。
「リバティ!」と高らかに叫んだ者も居たが、あれから70年も経った今のロシアを見れば分かるように、「自由」は遠い……。
そんなロシアを、「くだらない」と言ってのける。
……終わり方オサレ過ぎだろ笑。