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仕立て屋の恋のmorioのレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
3.8
フランス映画、パトリス・ルコント監督作品。
主人公の仕立て屋イールは偏屈な性格で人と接する機会も少なく暮らしている。唯一の趣味は、隣のアパートに越してきた女性アリスの部屋を覗き見ること。

ところが、ある日、いつものように彼女の部屋を覗き見している時に、偶然アリスの恋人がある殺人事件の犯人であることを知ってしまう。その日を境に彼の日常が徐々に壊れていく。
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さて本作品。
ズル剥けハゲ紳士の純粋すぎる究極の愛劇とでもいいましょうか。覗きが趣味なんてキモイとか、稲妻の光で浮かび上がる顔が生首とか。。間違っていません(#^^#)

でも、彼って自分の世界があり自分のルールがある。その主義を通すスタイルが格好良くも感じました。部屋はきれいに仕立てられているし、覗くときもばっちりスーツで決めて姿勢がまあ正しいこと!


(※以下、ネタバレあり!)


物語の終盤、彼は彼の人生をかけた決断をして駅でアリスを待つものの彼女は来ない。落胆して帰宅した彼を待っていたのはアリスとともに刑事だったという流れ。
その時にイールが残したセリフが秀逸だなー

「君を恨んでいないよ。死ぬほどせつないだけさ。」

最終的に物語は悲しい結果を迎えるのだけれど、彼は自分のありままを彼女に見せて、彼女に自分の世界を理解してほしかったのだ、と別の方のレビューがありました。なるほどそうとも言ますね、確かに。

彼は彼女に恋をし、彼女に自分の世界を理解してもらい一緒に歩んでいきたいと一世一代の賭けに出たのです。
それが裏切られすべてが泡のように消えてしまった時に出たのがあのセリフで、ただただ切ないんだと。。
めっちゃ切ないやん。。ただの変態ズル剥けハゲ紳士じゃなかったんだと。ごめんよ🐱

覗きは犯罪だし、好きな彼女を覗くことに快感を覚える彼は変態かもしれなけどある意味それは美学な訳で。フランスってやっぱり美の国なのかなーなんて思ったりもしました。その辺の感覚がとっても興味があるなぁ。

結論:自分の美学を貫き通した彼は清々しいナイスミドルでした。合掌🙏

P.S.
フランス映画の雰囲気って独特だけどなんか好きかも。
フランス語の語感や、顔立ち、ファッションやインテリアのせいなのか、少し暗い雰囲気なんだけどインテリな会話やりとりが心地よくて😙
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