くまねこさん

ゴーストライターのくまねこさんのレビュー・感想・評価

ゴーストライター(2010年製作の映画)
4.4
「ゴーストライター」(2011年公開)ロマン・ポランスキー監督作のポリティカルミステリーをBS松竹東急で視聴。6年ぶり5回目、公開時に劇場で2回見た映画。やはり一級品のミステリーだった!

元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自伝執筆を依頼されたゴーストライター(ユアン・マクレガー)が、ラングの滞在する孤島を訪問。取材しながら原稿を書き進める中、次第にラングの過去に違和感を抱き始める。前任者の不可解な死のナゾに行き当たり、独自に調査を進めていくと、そこには国家を揺るがす恐ろしい秘密に触れてしまう…。

ユアン・マクレガーの出演作で最も好きな作品。才能溢れるのに飾らないキャラクターで、英国人らしいウイットに富んだセリフも好感。

N.Y付近の孤島なのにずっと曇天だし、序盤から続く不穏な空気感と大雨も良い。ラング氏のオフィスシーンは全部スタジオ撮影らしく、驚くことに殆どのシーンはドイツで撮影されてるらしい…

ラング氏に愛想を尽かしていたルース夫人(オリヴィア・ウィリアムズ)に言い寄られ、寄り切られる脇が甘いゴースト…。(ビジネスだから距離を置きたいと言ってて踏み込まれるなよ)

ラング氏の大学時代の友人ポール・エメット教授邸を出て、指示された道に進まず、左側に曲がり、乗り込んだ船から車を乗り捨て、追い手から逃げるシーケンスもスリリング。

ラング氏の自伝出版パーティーにて、謎を解き明かし、グラス片手にドヤ顔のユアン・マクレガーのあの一瞬の表情が忘れられない。
その直後、前任者マカラが残した初稿の原稿がストリートに舞い踊る呆気ないラストシーンが印象に残る。「好奇心は猫を殺す」という英国の諺を想起させる。

ミステリー映画として一級品であり、公開当時の年間ベストに入れなかった事を悔やんでしまう。

(追記) ゴースト(ユアン・マクレガー)が執筆のため宿泊するホテルのクローク係としてロマン・ポランスキー監督の実娘が出演してたのは軽い驚き。