晴れない空の降らない雨

ゴーストライターの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

ゴーストライター(2010年製作の映画)
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ポランスキーの社会派サスペンスドラマ。ひたすら雨模様の暗い画面と、どいつもこいつも陰気な登場人物で、イギリス映画アピールがすごい。

 面白いかというと正直微妙だが、ニュアンスのある人物描写や陰気なユーモア、外連味なく静かにサスペンスを盛り上げる演出は実にポランスキーらしい。大したことない話でも最後まで観させてしまう。
 
 本作の場合反復によって観客に嫌な予感を抱かせようとすることが多い(遺体の見つかった砂浜を歩く二人組、車とフェリー等)これは恐怖演出としては地味だが、死亡した前任者と主人公の同一化のプロセスでもある。彼らはともに、ゴーストライターから探偵へと変化していく。

 もっともヨーロッパにおける高評価は、国連を無視したアメリカのイラク侵攻と、イギリスの賛成と参戦、他方のドイツ・フランスの反対という時代背景を抜きに理解できないだろう。

 本作の英首相もトニー・ブレア同様にイラク戦争断固支持のタカ派で、当時よく言われた「テロとの戦い」というスローガンも出てくる。物語はこの首相のCIAスパイ疑惑をめぐる陰謀ものだが、岸信介のいる日本人としてはあまりに笑えない。