オノタカノフ

グラン・トリノのオノタカノフのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
3.5
午後ローにて。初見。

周囲と隔絶して生きる男の物語。と言っても山中にこもって仙人のような暮らしをしているわけではなく、普通に街中の一軒家で暮らしているのだが。

最愛の妻の葬儀に集った息子や孫たちとはとうの昔に心は離れ離れになっていて、ひょんなことから付き合いが生じる隣家のアジア人家族とも、言葉が通じるのは若い世代だけで、同世代の年寄りとはコミュニケーションは取れないし、生活習慣も異なるので、食事に招かれても居心地が悪いだけである。でも、そんなことは彼にはどうでもいいことで、そもそも彼は周りの連中とうまくやっていきたいとも思っていない。

周囲の連中も似たようなもので、彼に関することでほとんど唯一関心を集めるのは彼の所有するイケてる車のグラン・トリノだけである。

彼が正しいと信じるやり方が周囲の人間に受け入れられていないのは彼自身承知しているし、別に気にもしていない。他のやり方など彼にはできない。それだけ。だが、自分のやり方でやったことが間違っていたことが彼自身に明らかになった時、彼はどうしたか。

イーストウッド演じる主人公の最後の選択と行動が正解だとは思わない。イーストウッド監督も、ああいう場合にとるべき一般論的な正解の行動を描くつもりもなかったのだと思う。神ならぬ身のああいう人物が、ああいう行動をとることで、彼なりに諸々の事柄と折り合いをつけたのだと思う。

なんか切ないので、むしろ評価はこの程度にしておく。
オノタカノフ

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