1839年にスペイン籍の奴隷輸送船「アミスタッド号」で起こった奴隷反乱事件と、それに関する裁判を基にした作品。
囚われていたアフリカ人奴隷たちが反乱し船員たちを殺害、船を制圧するが、数カ月後にアメリカ海軍に拿捕されてしまう。
捕まえた奴隷の処遇を巡って、関係者たちが権利を主張しあい、イギリス、スペイン、アメリカなど国家を巻き込んだ法廷闘争に発展していく。
あまりにもドラマティックな展開で脚色を疑ったが、ほぼ史実通りでびっくりした。
スピルバーグ監督作品かつ、マシュー・マコノヒー、モーガン・フリーマン、アンソニー・ホプキンスといった錚々たる面子が出演しているにもかかわらず、意外にも知名度が低い気がする。
一過性のものとして消費されるエンタメ作品ではなく、骨太で強いメッセージ性があり、後世に残るべき名作だと感じた。
「奴隷貿易」という単語は世界史の教科書で知ってはいたものの、いざ映像で見せられるとその凄惨さに言葉を失う。
白人が襲来して無差別に攫っていくイメージだったけど、黒人が黒人を捕獲して売人に売り渡している様子に衝撃を受けた。黒人コミュニティ内でも部族同士の対立があり、同じ人種だからといって一枚岩ではないんだなと感じた。考えてみれば当たり前の話なんだけど。
奴隷を「人間」とみるか「所有物」とみるかが争点となっていること自体ヤバいんだけど、これが当時の人権感覚だったんだな。
この事件と裁判が南北戦争の遠因となり、奴隷解放につながったことを思うと歴史の巡り合わせを感じる。
奴隷たちのリーダー・シンケを演じたジャイモン・フンスーが格好良かった。言語の壁を少しずつ超えていく過程が泣ける。