記録用
ジャン・コクトー監督作品。
引きこもり中年の悲哀。
ディズニー作品で有名な美女と野獣ですが何度か映像化されておりジャン・コクトー版は1946年に製作されました。
原作はヴィルヌーヴ夫人版そしてそれをロンドンで子供たちに読み聞かせるために改良されたボーモン夫人版がオリジナルです。
この原作は18世紀のフランスで描かれており時代は豪華絢爛ロココの時代だ。
世界的にもこのような時代は文化が発展しやすく裕福な貴族の女性たちは御伽噺を出版するのが流行り。
しかしその中でも家父長制や男女の不平等を物語に隠しアレンジド・マリッジや女性の自立を訴えようとしているのがわかる。
ヴィルヌーヴ夫人とボーモン夫人共に夫の不貞なども夫婦間にいざこざもありフランスではこの後離婚を制定する法律が可決されるなど世の中がそのような風潮になる直前だったのかもしれない。
物語の型としては異類婚姻譚として基本的な部類。異類婚姻譚とは日本で例えるとツルの恩返しや雪女とかですかね。
しかしそこにいわゆる「青ひげ」のような城に何年も閉じこもり女性に接したことのない中年、老人のニュアンスが追加されている。
野獣は何度も若いアヴナン(アニメ版のガストンのポジション)へ嫉妬して自信をなくしている。アヴナンは若い男性性の象徴として野獣は老人として何度も渇きの演出が登場する。性欲か人肌の恋しさなのかディズニー版よりも情けない。
アヴナンと野獣の俳優が同一人物なのは興味深い。
この辺りは原作者のヴィルヌーヴ夫人が晩年、夫をなくし屋敷に一人暮らす詩人の家で家政婦として居候した経験からきているのだろう。
美女と野獣は毎回フェミニズム的な批判を受け毎回アップデートされいて違いが見られるがディズニー版は完全に原作よりもこのジャン・コクトー版のアニメ化といっても間違えなく、ジャン・コクトーは原作よりも幻想的に製作しているので家具が動いたりファンタジー成分が強い。
そして序盤は「シンデレラ」や「リア王」的展開で物語が進むのだがディズニー版は先ほどのベルと野獣の関係性にだけ注力しそれ以外を省きミュージカルでまとめたのは子供向けのアップデートとしてはうまくいっている。
ジャンコクトー版は野獣が人間に戻りアヴナン(ガストン)が野獣になるがベルが実はアヴナンの方に恋心があるなどもう少し捻りが効いていて大人向けなのだろう。