めしいらず

オーソン・ウェルズの オセロのめしいらずのレビュー・感想・評価

4.3
オーソン・ウェルズによるシェイクスピア劇。逆光で光と影を際立たせたオープニングの画はまるで版画を見ているような美しさ。史跡をお得意のパンフォーカスでスケール感豊かに切り取った映像と、荘重な音楽や重厚な台詞回しでこの著名な悲劇を完璧に演出。改めてウェルズは視聴覚を幻惑する天才だとしみじみ思う。将軍オセローが悪辣な臣下イアーゴーの謀略によって妻デズデモーナと忠臣キャシオーの不貞を疑い、嫉妬に駆られ正気を失っていく。人を疑うことを知らぬ善人故に簡単に騙されるオセローの哀れ。疑惑に心を蝕まれてとうとう妻を忠臣を手にかけ闇に堕ちる。まさしく悲劇である。膂力はあれど美しさとは無縁な出自への引け目。疑惑は弱い心の中に巣食い荒れ狂うのだ。
再鑑賞。
めしいらず

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