近本光司

流れるの近本光司のレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
3.5
はじめて見たときに湧き上がってきたエモーションの感じ、をよく憶えている。久し振りに見直して(劇場で見たのははじめて)、どうしてそんなに感動したのだろうと不思議に思った。今回はむしろ技巧というか、成瀬ならではのショットとモンタージュのエコノミーにばかり注意がいった。これだけの登場人物の入り組んだ関係性を、ひとつやふたつのショットの繋ぎで見事に語ってみせる。並みの監督がおなじ脚本で撮ったら、下手すればもう一時間の尺を要しただろうと思う。そのいみでいかに成瀬がすぐれた監督かをよく伝える作品。