晴れない空の降らない雨

反撥の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
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 ポランスキーがイギリスで撮った長編第二作は、前作でわずかに感じられたヒッチコックの影響はより明瞭になっている。要するに心理主義的なサスペンス(人物のリアクションに焦点を当てた恐怖演出)ということだが、他方で女性心理に分け入っていくところにポランスキーの個性が強力に発揮されている(それがどの程度真実なのか、自分には見当つかないが)。
 しかし、差異はその程度にとどまるものではない。あくまで良質の娯楽を提供するために特定のスタイルがあるヒッチコックと違い、ポランスキーは心理主義の徹底によっておぞましい実験作をつくってしまった。同じ狂気という主題を扱うにしても、主人公が狂う過程を丹念に描くことで、結果として本作はヒッチコックとは似ても似つかない。とりわけ目立つのは、女性という題材と無関係でないだろうが、恐怖演出に生理的次元が導入される点であり、それによって本作はホラージャンルに接近している。