悪魔の毒々クチビル

昭和歌謡大全集の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

昭和歌謡大全集(2002年製作の映画)
3.4
「でも弾は一発しかくれないんだもんな、あのおじさん」

成り行きで若者グループとおばさんグループが殺し合いを始めるお話。


村上龍の同名小説を松田龍平主演で映像化した作品です。
監督は篠原哲雄。
子どもの頃、夜中にふと目が覚めて居間に行くと母親がこれを観ていたんだけど、俺が入るなり「あんたは観ちゃ駄目!」と怒られた思い出が。今思うとそりゃそうだなって。

内容的には本当に殺し合いでしかないんだけど、殺害シーンとかその他にもタイトルの通りちょいちょい昭和の歌謡曲が流れたり、劇中で登場人物が歌ったりしています。
キャラ的にはどっちのグループも良くも悪くもクセがある人物が多いんだけど、おばさんグループが全員バツイチで下の名前が「ミドリ」だったのは久々に見返すまで忘れていました。
まぁ見返したのも結構前の話ですけど。はい、ちょっとうろ覚えだったりします。

ナイフで喉を切り裂く所から始まり、そこからトカレフやらバズーカやらとどんどん殺害方法がスケールアップしていって、最終的には……な荒唐無稽さは印象的でした。
血も派手に飛び散りますし、バラバラにもなりはします。

ただ、敢えてそう言う描き方にしたんだろうけど、若者もおばさんもキャラとしては全く好きになれないどころか興味も持てないのは残念でした。
そもそも事の発端は若者グループの一人スギヤマが半ば衝動的におばさんグループの一人を殺してしまったからなんだけど、こいつはこいつで只の痛い奴だし若者側はどこか抜けきっている部分が強くて観ていて恥ずかしい。
おばさん側もピップエレキバンのくだりとかは生々しいなぁ、とは思えどこっちはこっちで面倒くさいなって人達だし。
原因は若者側ってかスギヤマなんだけど、人間的に残念な部分だったり「あ、そうですか」な部分が多くて互いの殺り合いの白熱さが欠けていたと言うか。
一方でびっくりするくらい「おばさん」って存在がディスられていて、時代を感じました。

あの霊が見えている女の子とか、気になるキャラの存在が中途半端だったんだけど原作だとそこら辺も詳しく描かれているのでしょうか。

やるせなさや虚無感漂う中でどんどん後戻り出来なくなる復讐劇、と個性的ではありますがそこまで嵌まれはしなかったです。
でも要所要所のバイオレンスシーンは良かったですし、古田新太が謳っている横で敬礼しているシーンは初見時に何故か笑ってしまったのでまぁ悪くはなかったかな。