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サタデー・ナイト・フィーバーのNMのレビュー・感想・評価

2.2
初めて観たかも。
不器用な若者たちの葛藤が描かれている。
学歴も家柄もない。仕事もないかあってもすぐクビになったり翌日取り消されたり。
とにかく体を動かしたい、大きな声を出したい、危ないことをしたい、夜も寝たくない、常に仲間と一緒にいたい、すぐいらつく。生き物としての本能そのものとさほど変わらない程度の行動。

これまで褒められたのはダンスだけの男。ダンスが上手いというだけで惚れてしまう女。他の男と寝ると言うと慌てて誘う男。妊娠させてしまい途方にくれる男。華やかな世界に憧れ自分を切り売りする女。そんな女を使い捨てる大人たち。進路を強制され無理にでも従おうとした男。帰ってきた彼を理由も聞かず叱責する両親。女は犯すものとしか思っていない男たち。相談先がなく命を諦める男。
人生において視野が狭い、選択肢がない、という状況はできるだけ避けたいところ。だけど若いうちにはその重要さに気づかない。

若者の、体を動かしたいという衝動を一人で発散できるダンスというのはとても平和な方法だし、大したスペースも道具も要らないし、コスパが良いと感じた。
ダンスだけで留まらず、もっとおしゃれしたいとか目立ちたいという方向になればコストがかかっていくのはどの趣味も同じこと。

女を犯そうとしたけど謝ったら許してくれました、というのはほぼあり得ない話で、男の幻想でしかなく面白みも感じなかった。輪換したけど女にも責任があるんだから悪くないです、隣で輪換始まったけど僕は手を出しませんでした彼らとは違うでしょ、というのも現実には通るはずのないこと。トニーはその後ステファニーの手ほどきを受けつつ世の中を知り成長しやがては幸せに暮らしました、という未来も現実的でない。きっとこういうファンタジーを信じてしまった青年たちが無数に生まれたし、今も生まれ続けているんだろう。

主人公は、もしかして自分のセカイはとても小さいものなのでは、ということにぼんやりと気づき始めた様子だった。そこから価値観や倫理観を伸ばせるのかは未知数。気付いたけどどうにもできずかえって鬱憤を溜めるかもしれない。

ストーリーはあるのかないのか、少なくとも魅力は感じなかった。ただこういう現実があるという紹介、暮らしの一部を切り取ったという感じ。
家族や恋人と観るのは難しい。
現代では視聴する意味の薄れた作品で、当時観てこそ価値もあったのかもしれない。古い名作を観るときは、そのときだから価値があったのか、今でもすたれていないのかは見極める必要があり、限られた人生なら後者を優先すべきなのかもしれない。
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