いかにもヌーヴェルヴァーグ。脚本がなくて自由すぎて、流石にこれは酷いかと思いきや…どんどん引き込まれた。
ほとんどのシーンが即興劇。マリアンヌ(アンナ・カリーナ)がフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)に「誰に話してるの?」と真顔。「観客にさ」ふわっと第四の壁を越えてくる。
資産家の娘と結婚して子どももいるフェルディナン。妻の実家に頭が上がらない生活に鬱々としていたある日。5年前に別れた恋人マリアンヌと偶然出会ったのだった…
その後、殺人事件に巻き込まれて逃避行。あまりにも身勝手なふたり。愛してると言い合いながらお互いを信じていない。破滅型ラブストーリーだった。
フェルディナンがマリアンヌに「ピエロ」と呼ばれるたびに「フェルディナンだ」といちいち訂正。でも気狂いピエロで間違いない。
フェルディナンが観ていた映画の中の台詞が、この作品の主題なのかと思った。
「…いつになったら虚像を捨てて正体を見せるのかしら。存在しているとしたら…」
男と女はいつまで経っても分かり合えないのよね、と思った。