trp

野ゆき山ゆき海べゆきのtrpのレビュー・感想・評価

野ゆき山ゆき海べゆき(1986年製作の映画)
4.4
橋上から儚く花火が降り注ぐ中、「男だから、」と無意識ながらに答える尾美としのりの無垢な表情がとてつもなく切なくて、戦争の矛盾を抱えた少年にこびりついた観念に、「、女はどうするの?」と聞くお昌ちゃん。手前で光る火花が彼らの生命とこの時代の戦争を彷彿とさせて、美しいなんて軽々しく言えないシーンだ。
序盤で追いかけっこをしたり、戦争ごっこや地図作りで見知った町並みに、女中へ行く女の子たちを隠す構成も見事だなと。そしてそこから今までのように走り去るでなく、弱々しく見えない何かに抵抗できないまま女の子たちは自らの足でその地を後にする。
ラスト、大人たちを罠に仕掛ける子供たちの幻想的なシーンは、彼らが今まで擬似的にみえて実は真に体験してきた物事に呼応して"子供"ではない切実さが胸を打つ。
映画をつくったひとびと、と大林が見せたかった人へのアプローチもよくわかる。亡くなってしまったんだな、とようやく思えた。
trp

trp