サッカーのことにかまけてばかりいる10歳の悪童が、イラン代表チームの試合がどうしても見たくて、あらゆる悪い手段を使ってどうにか金を工面し、バスで遠路はるばるテヘランの会場に到着したけれど…。平気で嘘をつく。親の金を盗む。下級生たちからお金を詐取する。チームの備品を内緒で売る。勉強も宿題もしないのに、悪事にだけは知恵がまわる。体罰を受け泣きわめいても後にはもうケロリとしている。傍目には大ごとになっていく事態にハラハラさせられてしまうけれど、彼なりの屁理屈で物事を捻じ曲げ疾しさを少しも感じることなく都合の良い結果を持っていく悪童っぷり。子供なんて自分の欲望に忠実なものだけれど、ここまでやれる豪胆さは子供離れしている。でも会場に着いた油断と金策の疲労が彼の気を緩ませる。ちょっと昼寝のつもりがちゃんとした睡眠になってしまい全てが台無しになってしまうのだ。やはり彼はまだたわいない子供なのだ。いま彼が直面している自己嫌悪と、村に帰った後で起きるだろう因果応報を思うと、暗澹たる気分にさせられてしまう。身に覚えあるその気分にこちらまで肩を落とすよう。ただ、彼にとっては好きなことに対して一本道なだけなのかも知れない。