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男はつらいよ ぼくの伯父さんのkojikojiのレビュー・感想・評価

3.8
第42作
新たな主人公満男の登場、大転換の「満男編」の序章である。
マドンナは、マドンナと言えるかどうかわからないが壇ふみだ。舞台は佐賀。

 第1作から観てきた「男はつらいよ」ファンの私も、この時期は、毎年正月、盆に必ず観ることに少し惰性を感じていた。
それに加えて、満男と泉の恋愛はむず痒く、ちょっとついていけないと思っていた。
とは言うものの、この作品が寅さんの一つの大転換の作品であったことは間違いない。

当時の感想は「面白くない。」
それが率直な感想だ。
要するに新たな主人公満男を認めてはいないと言うことなのだろう。
それで、これ以降の作品はほとんど冷めた感じで観ていた記憶がある。

何十年ぶりにこの作品を観た。

高校時代に後輩の泉(後藤久美子)に思いを寄せていた浪人の満男(吉岡秀隆)。両親の離婚で柴又を去った泉に会うため家出して、旅に出る。その旅の途中、バッタリ寅さんに出会うことになるのだが…

不思議なくらい泣けた。
家出から帰ってきた満男を迎えるさくら夫婦の思いに、おばちゃん,おじちゃんと柴又の人達に泣いた。
当時とは全く違った感情が自分の中にあった。時は流れ、自分も、自分を取り巻く状況も全く違っていて、そんな自分の目に映る本作は全く違っていることに気づかされた。
満男は自分の息子とダブルし、寅さんの老も自分に重なる。妹さくらと博の家庭も柴又でしっかり根を張っている。そんなもの全てが自然に受け入れらる状況に自分がいること気づいた。

山田洋次監督、寅さんスタッフが精魂込めて作った本シリーズ、観る側の変化でまた違ったメッセージが感じ取れることを知ることができた。

ラスト、寅さんか旅の空で迎えた正月の風景は、何故か晴れやかで、寂しい。
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