2024.11.30
山崎貴監督・脚本・VFX。
もう10年以上山﨑監督ファンをしていますが、『ジュブナイル』と今作は配信もなければ映像ソフト化もされていないので全然観る機会に恵まれず……。
それが今回、監督デビュー25周年を記念して両作がデジタルリマスター版となってリバイバル上映!
これは見逃すわけにはいかない。
裏社会の仕事人・ミヤモトは、横浜の港で行われている人身売買の現場にて、因縁の敵・溝口と邂逅する。
その場に謎の穴が出現し、謎の少女・ミリが落ちてくる。
ミリはミヤモトの仕事ぶりを見て、彼女に課されたミッションを手伝うように依頼する。ミリは2084年、宇宙人・ダグラに侵略された未来から、最初に地球に降り立ったダグラを抹殺すべく、2002年にやってきたという。
半信半疑のミヤモトだったが、ミリが見せる謎の力を見て渋々彼女への協力を決める。
しかし、最初にダグラが降り立った地にその姿はなく、既に宇宙開発研究所に運ばれた後だった。
ミヤモトは協力者の謝を頼りながら、宇宙開発研究所に潜入するが、そこは既に溝口が所属するチャイニーズマフィアのスパイが入り込んでおり、溝口はダグラのチカラを利用しようと考えていた。
そして、最初に地球に降り立ったダグラには、ミリも知らない真実が隠されていたー。
んん〜なるほどなるほど。
『ジュブナイル』ほどの感激やその後の山崎貴監督作品との繋がりを連想させるエモみは少なかったものの、現在のような売れ線ではなく監督のやりたいことを詰め込めるだけ詰め込みましたみたいな、山﨑貴監督のライジングのようなものを感じ取れる作品でした。
とはいえ縁も所縁もない他人同士の関わり合い、違う社会を生きるもの同士の共闘など、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『寄生獣』シリーズに受け継がれる系譜も感じ取れますね、
不勉強なもので想像で補う部分が大きいですが、『マトリックス』のような、『ターミネーター』のような、『エイリアン』のような、往年の洋画に影響され、それらのような作品を邦画でも作ろうという気概も感じました。
現在の山崎貴監督には日本産のコンテンツを日本の技術で映像化することにこだわっている印象ですが、その根底には、山﨑監督が憧れ続けたであろう洋画に対するロマンがあったのではないかと、今作を観ると感じますね。
日本のCGはハリウッドに比べてウン十年遅れているとか言われて久しいですが、そんな状況であっても洋画のような作品を日本でも、という情熱が昔からあり、その連なりが今日の邦画に繋がっているんだと思うと、山崎貴監督の邦画界への貢献度は計り知れない。
さて、今作自体について。
最近の山崎貴監督作品といえば、人間ドラマだったり、日本の文化や宗教観に根付いた世界観をVFXで創り上げている印象ですが、今作は無骨も無骨なSFアクションムービー。
直近でアクションが要素として入っている作品というと『寄生獣』シリーズくらいだったので、逆に新鮮さを感じましたし、昔はこんな作品を作っていたんだなと不思議な気持ちにもなりました。
前作の『ジュブナイル』のように、宇宙人やタイムトラベルの要素を組み込んだSFモリモリの作品で、相変わらず考証の甘さもなく、安心して観られる仕上がり。
最近見ない金城武のカッコよさ、前作から連続して出演のちょっと成長した鈴木杏の可愛らしさ、なんだかダメお父さんのイメージが強くなってきた岸谷五朗のヤバい奴加減など、最近のノワール邦画では見ない面々で、やはり個人的に目新しさもありつつ、こんな時代もあったんだと、ノスタルジーに近い気持ちになりました。
独特の雰囲気を醸し出す生前の樹木希林を観れたのも嬉しかったです。
しかしなんなんだこの謎の頼もしさは。
映像面については、VFXもモリモリに使っているものの、印象としては特撮や特効、操演などがメインだった感じです。
それでも特撮ヒーローものに近くなりすぎず、独立した一つの作品として完成していました。
怖いのは宇宙よりも新しい技術を悪用しようとする人間だよねというところは、何年経っても変わらないテーマなんですね。
『リターナー』はミヤモトのコードネームのようなものでしたが、未来へ“帰還”するミリ、宇宙へ“帰還”するダグラ、そして裏社会から本来生きるべきだった世界へと“帰還”することができたミヤモトなど、様々な意味が込められていたように思います。