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フランソワ・トリュフォー 盗まれた肖像のpikaのレビュー・感想・評価

4.5
トリュフォーの追悼ドキュメンタリーというか知人や家族によるインタビュー集。
トリュフォーをよく知る人たちから見た本質的な印象を始め、作品の意図や自己投影の深さなど、作った時のトリュフォーの姿勢や言葉から感じた彼の想いを多分に語ってくれる。
情報量が凄まじく、一語一句漏らすのが勿体無いほど興味深い。

「柔らかい肌」と「恋のエチュード」は他作品と比較すると珍しい部類の作風になるが、これこそトリュフォーの秘めた部分を惜しげもなく晒した生身の作品であるということや、バザンへの想いから生まれた父性の愛の結晶である「野生の少年」について、「大人は判ってくれない」を見た両親の反応を叔母が語ったり、「夜霧の恋人たち」を作るにあたって私立探偵事務所に赴いた際、会ったことのない実父探しを依頼して探し当てたエピソードなど(「大人は判ってくれない」同様母親は再婚し育てたのは養父)、トリュフォーの映画人生と実際の人間性や半生を凝縮して知ることのできる貴重な作品。

レオが出てないのは少し残念だがロメール、シャブロルなどの巨匠からドパルデュー、アルダンなどの出演者、元妻や娘などがトリュフォーの言葉や当時の生活や思い出などを語り、当時は評論家だったアサイヤスや共同脚本家の面々が作品に込められた意図を紐解き、「大人は判ってくれない」のドワネルのモデルはトリュフォーともう1人製作を担当した友人との混合で出来上がったものだと本人が語ったりして、とにかく面白い!

ハイライトはルノワールによるトリュフォー賛美!「突然炎のごとく」には嫉妬し、自分が撮ったのかとすら思うカットもあったと語るルノワールを映像で見れたことに感動。

映画に出会い、映画に人生を捧げ、10代の頃から周りの仲間たちを引っ張って「フランス映画の墓掘り人」と言われるまでに熱心に評論し、自分は背水の陣で「あこがれ」を作った。
「仲間たちは親のコネや学校を卒業した経歴からもし映画作りに失敗したとしても他の道があったがトリュフォーには何もなかった、周りの奴らは心配したがトリュフォー自身は失敗を恐れず真っ直ぐに突き進み続けた、仲間たちはそれぞれバラバラに映画作りをしてきたがなんとなく彼らを一つにまとめようとしていたのはトリュフォーで、彼の死で全員が何か後ろ盾を失ったような感じがした」とシャブロル(確か)が語っていたのが印象的だった。

ますますトリュフォーのことが好きになる価値のある作品でした!
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