すべてはここから始まった?ホッケーマスクでお馴染みジェイソンというメガホラーアイコンを生んだ『13金』、記念すべき1作目。ただし、今作に当のジェイソンは(ほぼ)登場しないのだけれど。
冒頭から、湖畔のキャビン、集まる若者、「あの場所は呪われておる」予言おじい、イチャつくカップル(死ぬ)、理由を見つけて単独行動(死ぬ)…
エトセトラ、初診で書かされる問診票の病歴欄にチェックを入れるかのごとき勢いで「元祖・お約束」の数々をこなしていく。さすがレガシーの風格であり、今となっては伝統芸能。都度都度「いよッ」とか叫ぶべきだ。
ただし、いかにも当時のインディ映画らしい難もちらほら。
90分サイズの尺においても結構のんびり…というか単純にやることがなさすぎて、集まった若者たち(ちなみにそのうち一人はK・ベーコン兄貴である)が遊んだりしてる風景がゆるゆると続く。「今なに待ちコレ?」みたいな時間が度々あったりするのだ。
また、終盤に明らかになる殺人鬼の正体(※1)にも納得感が薄い。いちおうミステリー仕立てっぽく進んで行くにも関わらず出題範囲外から出てくるようなものだし、ギリ反則と言って良い。
それにこれはベタなツッコミだとは思うけれど、その人物が有する属性や、ラストに細身のファイナルガールと繰り広げるへっぴり腰の泥試合を見る限り、それまでの豪快な殺害をこなせたとはとても信じられないのである。
とまあ、既にツーアウトが決まっており崖っぷちなわけだけれど、ローファイな中でも伝わる手作りスプラッタ感、つまり「かわいげ」が残されているため救いはある。ほら、人狼ゲームとかでもロジックを超えて必要なのは結局かわいげだったりするから…
あとは《視点》のコントロールが魅力的だ。戯れる若者たちを遠景から見つめる《視点》、標的を物陰からとらえる《視点》。これは誰が見ている光景なのか?カメラは自然と想像させ、時に怖さを醸し出し時にミスリードに使われつつ、いつしか観客と殺人鬼のビューは同期していく。
今作の犯人が語る主張はいわば狂った八つ当たりであり、被害者からすれば完全なもらい事故だ。しかし、この因果を度外視した理不尽こそが多くの観客に「殺人鬼体験」願望を自覚させ、スプラッタの可能性をFOR FREEな領域に拡大し、やがてジェイソンなる依り代に結実したことの真髄なのかもしれない。
そんなことを考えつつ、そこそこ長そうな道のりだけれど出発してみましょうね。さあ、お前の金曜日を数えろ。
>>To Be Continued...
-----
※1:これって、ダースベイダーの正体くらい最早ネタバレにならない判定で良いのかしら?いちおう伏せてみたけれども。