妻、と書いて『おんな』と読むそうな。
岩下志麻様のホストの革靴みたいな髪型とか、レディガガも無言で棚に戻しそうなサングラスとか、太もも仕込みピストルとか、がめちゃ格好良いのはわかる。わかるんだけれども、映画全体としては散漫な印象が残って、何のお話だったのかよくわからないままだったね…?
でも考えてみれば、その空虚さこそが正解なのか。仁義だの何だのにかまけて服役してたり殺したり死んだりと勝手な男たちと、それに振り回される女たち。超越的な強キャラで人生を乗りこなしているかに見えた環(岩下志麻)ですら、その例外ではなかった。
生を尽くしてもなお、暴力の後に残るものなどない。
現代のヤクザものにステージを移しても、底に流れるのは高知3部作から続く五社英雄イズムであり、目立つ濡れ場や喧嘩シーンよりもきっとそれこそが真髄。この後に作り手や演者を変えながらも長く続く『極妻』シリーズは未見だけれど、wiki等を読む限りではその精神性は別物となっていくようだ。
ところで岩下志麻やかたせ梨乃といった中心人物以外のキャストたち、特に若い衆役の男性陣のポンコツぶりが(数が多いぶん)どうにも目立つ。どうしても見た目重視で、他が疎かになってしまったのだろうか。しかし、それ故のヘンな間とかが天然の可笑しみを生んでいる箇所もあり、あながち悪いとも言い切れないのだけれど。