シリーズ第43作
マドンナは…
と言っても初期のマドンナとは扱い方が全く違う。今回、少しは寅さんも心が動いたかもしれないが、恋をしたと言うほどじゃない。その相手は、泉(後藤久美子)の母(夏木マリ)だ。
満男編の本格的な始まり。
父が会社を辞めて、愛人の故郷九州日田に引っ越しと聞いた泉は、愛人と別れてほしいと頼みに一人日田へ向かおうとしていた。満男は東京駅まで泉を見送りにいくのだが、矢も盾もたまらず彼女が乗った新幹線に飛び乗った。そして二人は日田へ。
それを聞いた寅さんは泉の母を連れて夜行で日田へ向かうのだった。
封切り時に観た時、つまり35年前になるが、寅さんと満男の関係がピンとこなかった。それがこの映画が「ちっとも面白くない」と思った原因だった。それははっきり覚えている。
ところが今回観ると、それが実にすんなり腹に落ちた。それ以上に、この関係はどんな映画でも観たことがない実に羨ましい伯父と甥の関係で、新鮮な家族の形を見せてくれる。すごく良かった。
前回も書いたけど、時間が経つとこんなに見方が変わるものかと不思議でならない。
特に寅さん、満男、泉母娘の四人で泊まった温泉宿、散々飲んだ後布団の中で、隣で泣き出す泉の母の声を聞きながら寅さんと満男が交わす会話は、笑って、泣いて、久しぶりに寅さんを満喫させてもらった。
前回に比べ満男が断然いい。吉岡秀隆は元々上手い子役なのだが、これまでは何故かよそよそしく感じ、寅さんファミリーの中でも立ち位置をしっかり捕まえていないような感じがしていたが、この回はまさに主役になっていた。
ただ、イメージとして、満男は泉みたいな娘に恋をするだろうが、泉みたいな娘が満男を好きになるだろうか?それが後一つピンとこないところだ。つまり、このカップル、あとひとつ似合っていない気がする。しかし、まあ、こんなカップルもいるだろう、そう思って納得した。