このレビューはネタバレを含みます
「選択を重ねてその人の今がある」とフランチェスカが言った。私にはこの言葉が重く深く響いた。私たちは誰でも、無限の選択肢の中から一つの道を選びながら一瞬一瞬を過ごしている。言い方を変えれば私たちの過去には無数の選ばれなかった人生がその瞬間で止まっている。しかし、未来がなくなった人生のいくつかは、その人の心の箱にしまわれ、時には、失った未来を思い苦しくなるのだけれど、いつしか、選ばれなかった選択肢を提示した出来事は、人生をあたたかく支える宝物となる。そして、人生で起こった出来事や出会った人は、例え、それが提示された選択肢を選ばなかったとしても、その人の心の中に内包され、その人を変えていく。それは、成長だったり、成熟だったりするのだろう。私は、この映画に、このような思いを抱かされた。
ゼネラル・ストアを出たあと、ロバートを見つけたフランチェスカ。ロバートもフランチェスカに気づいて見つめ合う。ずぶ濡れのロバート。そのあと、十字架のメダルを車のバックミラーにかける。それを後ろの車から見るフランチェスカ。私は、二人に強く共感し、切なさで苦しくなった。そして、死、間近の夫リチャードが妻フランチェスカに伝えた思い。全てを察していたリチャード。いろんな思いを乗り越え、飲み込んで来たはずのリチャードが発する感謝の言葉にも心が震えた。