針

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離の針のレビュー・感想・評価

3.8
ヨーロッパ横断鉄道の旅のとちゅうで偶然出会った男女が、ウィーンでぶら~り途中下車、そのまま共に一日を過ごす。題名通り夜が明けるまで……。

たぶん狙いは単純で、ふたりの過ごす時間が長引くにつれてどんどん別れが惜しくなる、その気持ちを観てるこちらにも共感させようということなんでしょうけど、自分もふたりと一緒に「このまま永遠に夜が続けば…………」とか思ってしまってわりと嫌いじゃなかったです😊 気持ちのいい恋愛映画だ……。

ストーリーの感触は恋愛”ドラマ”というよりかは、ロードムービーとかと近いかな。午後から夜明けまでウィーンの街をあてどなくさまよう中で、小さなエピソードがぽつぽつ浮かんでは消えていく。そしてその過程でふたりの想いがゆっくりゆったり強まっていく、というような。恋愛感情の発展をストーリーの中で劇的に描くのとは真逆のこの方法に、一種の批評性を感じておもしろかったです。確かにこういうなんとなしの時間の中で他人への好意って高まってくよなぁと思わされて……。

・ずっと二人きりで喋ってて、初対面の人にこんなに自分のこと話せる人はうらやましい……
・主役のふたりが本当にふつうの人なのがいいです。「こんな出会いって夢物語じゃん」みたいなツッコミをちょっと先回りして彼ら自身が言ってくところもいいのかな。
・てきとうな印象ですが。会話と編集のテンポはなんとなくアメリカ映画っぽいけど、弦楽器メインの音楽と画面から立ち上がる雰囲気はなんとなくヨーロッパ映画っぽかった。特に最後のはウィーンの街だから当然だけど。でも両者の「それっぽさ」みたいなものがあるとしたら、それがすごく心地よく混合されてる感じがしました。
・やたらハコがでかいロマンチックな大観覧車、もしかして……と思ったらやっぱり『第三の男』のやつと同じでした。まったく同じ設備のままではないだろうけど。

せっかくなので今から9年後に続きの『サンセット』を観て、もう9年経ったら『ミッドナイト』を観るみたいなのも贅沢な酔狂でいいな~とか思いましたが、たぶんふつうにすぐ観てしまうと思います➰

ひとことだけコメントに。
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