垂直落下式サミング

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
超人化実験でヒョロガリがムキムキに。おっしゃあ、ファシストと戦うぜ!とはいかず、バカな衣装を着させられた戦意高揚キャラとして祭り上げられてしまう。
たとえ実験が成功しても、工業的な量産に至らぬうちは唯一の成功個体をむやみやたらに外に出したくないだろうし、戦時の軍事技術ならなおさらだ。さまざまな事情があるから、スーパーソルジャー様もこんな扱いなんだろうなって、映画内リアリティの補強に一役かっていた。
最初はカンペ読み男だったのが、何度も公演をこなしているうちにだんだんとノリがよくなって小馴れてくるのや、実際に戦地にいない自分が現場の兵士たちになにかものが言える立場なのかと、生来の真面目さゆえに思い悩む姿など、短い時間でよく描かれていたと思う。
自分も祖国のために戦いたいんだと、何度も徴兵検査に志願するも落ちていた貧弱青年が、当時最高の科学によって力を得ることで晴れて超人兵士となったのに、安いプロパガンダとして消費される姿は、なんと滑稽だろう。彼のなかには、高潔な魂があるのに。スティーブ・ロジャースは、生まれながらに力を持っていた人ではないから、自分の力の価値をよく知っている。
アメリカが超人兵士プロジェクトならばと、ナチ公も負けず劣らずの科学力をみせつけてくるのだけど、第二次世界大戦に実際に使われていたレトロな兵器のなかに、光線銃のようなオーバーテクノロジーが混在していても、ナチスならこんくらいやっててもおかしくないよなって、すんなり受け止められた。レーザービームと血と硝煙の臭いの戦地を、星条旗柄コスチュームの科学の戦士が駆ける。むせる。
MCUシリーズにおいてキャプアメさんは、アイアンマンことトニカスに次いで出番の多い主人公キャラなんだけど、身体能力がスゴくて盾の使い方がうまいみたいな雑い能力しかないのに強化イベントも期待できないから、後から出てくる奴らと比べたらどうにもなんないくらい弱いダイの大冒険でいうクロコダイン枠なのに、足りないスペックを補ってあまりある魂の高潔さで引っ張っていく姿がよかった!
基本的に、少年マンガを読んでる男の子は、漫画の登場人物をスペックでしかみてない。強い順に好きだし、他と比べて圧倒的に強いやつならなおよい。範馬勇次郎や五条悟みたいな「最強」が好きで、ほんのすこしでも弱みを見せる人はあんまり…。
本部以蔵や脹相みたいな泥臭く戦ういぶし銀キャラの魅力がわかってくるのは、そこそこ大人になってから。モラウ、クリリン、ポルナレフ、愛してる。チャドにはもっと頑張ってほしかったけど。