アンジェイ・ワイダの代表作。戦後ポーランドの反共勢力という負け組を主役にしており、ニヒルな主人公と乾いたタッチによって映画全体にただならぬ虚無感がただよう。ワイダの演出自体は見たところ古典的にとどまるのだが、題材にフィットしている。時代の空気がよく出ている。
主人公のマチェクの造形が非常によい。後の創作に結構影響与えたんじゃないかという気がする。サングラスかけたニヒルな皮肉屋。死に様もアメリカン・ニューシネマっぽい。
デートからは特に画面から目が離せなくなる。逆さ吊りのキリスト像の側で後悔を語るマチェク。しかし、惚れた女は聞きたくないと言う。次に彼が目にするのは自分が誤って殺めた無実の労働者。「もう絶対にバッドエンドしか待ってねえ」という前振りからの、「何だか上手くいきそう」と束の間希望を持たせてからの、「マジか…」と呻きたくなる結末へ。このラストの流れは実に素晴らしくて、当時多くの人が衝撃を受けたのも納得する。