このレビューはネタバレを含みます
『葉隠れ』を愛読する殺し屋の話。
ジム・ジャームッシュが、殺し屋が主役の映画をやるという事でどうなるかと思いきや、アクション要素は控え目で、それよりも殺し屋の日常が主に描かれます。
淡々とした語り口に、オフビートなユーモアが乗っかる作りは、まさにジム・ジャームッシュ節といった感じで、ファンなら安心して楽しめる事でしょう。
そして、本作が面白いのは、そうしたジム・ジャームッシュ的な世界観に、殺し屋や武士道、ヒップホップなど、異文化が加わる部分。
武士道に傾倒する黒人にしろ、老人だらけのマフィアにしろ、異色な設定が本作に独特の味わいをもたらしています。
アクションシーンも、おそらくは殺陣を意識していると思うんですけど、銃を鞘に収める仕草や妙にスローモーな動きが印象に残るし、マフィアのボスを暗殺していく件もユニークで面白かったですね。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」との言葉通り、ラストで死んでしまう主人公。
バッドエンドと言えば、バッドエンドではありますが、彼の充足した表情を見ると、自身が望んでいた結末だった様にも思えますし、彼にとっては死がある種の救いになった様にも感じました。
数多くある、殺し屋を描いた映画の中でも異色の作品であり、ジム・ジャームッシュのフィルモグラフィーの中でも異色な本作。
だからこそ、今見ても新鮮に見れましたし、今後も唯一無二の作品として輝き続けるのではないでしょうか。