70年代後期カナダ制作のホラー風サイコスリラー。VHS以降2022年までソフト化されず鑑賞困難とされてきた一本。
ホラー映画専門の人気脚本家スティーヴン。反道徳的な恐怖を売りする彼の作風は一部か批判されはじめていた。次々と締め切りが迫る中、妻との関係もうまくいかずストレスが溜まる日々。そんなある日、TVで放映されていた彼の映画「死刑執行人」を子供達が観てしまい。。。
閣下殿のご紹介で鑑賞。
主人公が書いている様々な脚本を映像で再現していく手法は、その内容がホラー映画のため映像が短くても派手で面白い。特に序盤は唐突にインサートされるのでフラッシュフォワードか?と意表を付かせられた。ただし、本作以降に同じような構成の映画は沢山作られているので、今となっては手法自体の新鮮味は薄い(始祖となるのはどの映画だろうか?)。
再現される映像がそれなりに真面目に作られているのは好印象。話が進むにつれ映像の狂気がエスカレートしていくのを期待したが、逆にトーンダウンした印象なのが惜しい。
しかし、現実での悲劇的状況で疲労していく主人公の狂気は、アッパーではなくダウナーに向かうので筋は通っている。ホラーより芸術映画が書きたかったのだからネガティブになっていくのもわかる。個人的には落ち切った末のハイテンションが観たかったが、これは観客側の勝手な言い分だ。
それでもやはり残念だったのは、主人公が学生たちから受けたホラー映画批判に対して、抗う姿勢が本作から感じられなかったこと。これでは言われっぱなしで映画創造の敗北ではないか?アゾパルディ監督にはクリエイターとして一矢報いる言及or芸術的ホラー表現をしてほしかった。感傷的なエンディング曲をかけて黄昏れている場合ではない・・・あれ?実は笑わせようとしていたのか!?
方向性の好みはあるが、ホラー映画作家の自己批評を取り入れた着眼点はユニーク。ホラー映画版「8 1/2」を目指した悲観的な意欲作。
※妹を演じた子役は同年同国製作の「ザ・ブルード/怒りのメタファー」(1979)で娘を演じたシンディ・ハインズ。
※ホラー漫画家が狂っていく日野日出志「地獄の子守歌」は1977年の漫画作品