櫻イミト

聖し血の夜の櫻イミトのレビュー・感想・評価

聖し血の夜(1974年製作の映画)
3.8
スラッシャー映画の始祖とされるジャッロ風カルトホラー。ガーシュニー監督と主演メアリー・ウォロノフは夫妻でアンディ・ウォーホルの仲間。回想シーンの人々はウォーホルのファクトリーのメンバーたちが演じている

1950年のクリスマス・イヴ。マサチューセッツ州の田舎町で、豪邸の主ウィルフレッド・バトラーが火だるまになって謎の焼死を遂げた。豪邸は遠くに住む孫ジェフリーが相続したが放置されていた。20年後のクリスマスイブ、ジェフリーから家の売却を任された弁護士と恋人が町役場を訪ね、村に激安で買い取ってほしいと交渉を始める。ところが、豪邸に宿泊した二人は何者かに斧で惨殺される。その頃、ジェフリー本人が村に到着し訪ねた町長の家で娘ダイアンと出会う。やがて二人は豪邸に隠された恐ろしい秘密を知ることになる。。。

カルト化しているのも納得の怪作だった。フィルムの状態が悪く(マスターフィルムが不明とのこと)最初は気になったが、結果的にそれも本作の味わいと思えた。

序盤から頻出する笑顔の少女と女性の肖像写真。その使い方が禍々しい予感を掻き立てて好み。以降、ジャッロ風の演出とスラッシャー表現が重ねられ、ゴシックな屋敷を舞台にミステリー要素を含んだ物語が進む。終盤の回想シーンはサイレント時代のホラーを彷彿とさせる陰影の強い映像で精神病院の悪夢的な光景を表現している。

戦前ホラーから後のモダンホラーまで網羅した本作の映像はそのどれもが巧く撮れていて、ノイジーなフィルム状態が不思議な統一感を感じさせた。シナリオは少々荒いと感じたが、最後に明かされる豪邸と町の秘密がとんでもなく陰惨で、結果、力技で承服させられた。

映画史的に本作は、ジャッロとスラッシャーのミッシングリンクと位置付けられているらしい。ガーシュニー監督はアート性を意識して制作したとのこと。個人的にはかなり好みで隠れた傑作と言える。
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