「嘆きの天使」は観てないし、ファスビンダー監督作品は、「13回の新月のある年に」しか観てません。これは、西ドイツ3部作の2作目らしい。真面目な中年の独身男が、淑女の変装をした娼婦にハマる姿がチョロ過ぎて笑える。いつの時代も貪欲な女に男は敵わないんだなぁ。映像が美しく、ピンクやブルー等の光を使いお洒落に仕上げていて、拘りの演出が素敵でした。ラストも好みでした。

1950年代、フォン·ボームは、西ドイツの地方都市の建設局に新任の局長としてやって来た。真面目な彼は有力者の土建屋シュッカートの誘惑にも負けず、再開発事業に臨んでいたが、ローラという女性と出会い恋に落ちた。しかし、ローラはシュッカートの情婦であり、娼館で働く娼婦だった。



ネタバレ↓



ボームに最初に目をつけたのは、彼の家政婦でローラの母。実は玉の輿を狙てっていた。ローラはシュッカートとの私生児を育てながら、彼の売春宿で娼婦をしていて、ローラもボームに興味を持つ。皆から、お前なんかが相手にされる訳が無いと笑われ、ボームに猛アピールし、積極的にデートに誘い、あっという間にボームはデレデレ。
ボームは、仕事仲間エスリンに連れられ売春宿に現れると、シュッカートから、これから出てくる歌姫は私の娼婦だと言われ、登場したローラに愕然とし、店を出て行く。ローラは、下品な踊りで客を沸かせた。
ショックを受けたボームは、都市計画の会議で、決議される予定の地元の有力者に有利な案件を撤回。見直しを宣言した。更にシュッカートの悪事を暴き、売春宿や娼婦達も排除しようとします。
ボームの思いに気付いたシュッカートは、彼にローラは所詮娼婦だ、買って思う様にしろと言う。
売春宿に現われた彼は、ローラを買い、追加料金を払い彼女を下着姿にさせるも、彼女の前で泣いて終わる。
ボームは結局、丸め込まれ、計画を元に戻し、すべてが元通りに動き出す。そして、ローラと結婚。シュッカートは、娘が成人になるまで売春宿をボーム夫妻に譲渡すると言う書類を贈り、2人はイチャイチャつき始める。
何も知らないボームは、娘に幸せ？と聞かれ、少し間をおいて、幸せだよと疲れた顔で答える。恐らくシュッカートとの事も彼女がこの先も生き方を変えない事も知っているのだろう。

結局、いつの時代も金や肉欲に男達は勝てない。世渡り上手な娼婦の独り勝ち。イタイおじさんのタダの失恋物語ではなく、その後の悲しい人生をも予感させる終わり方が良かったです。しかし、幸せを掴んだ様に見えたローラもその後の事を考えたら、幸せかどうかは分からない。「13回の新月～」の方が好きだったけど、これはこれで面白かったです。

＊みんとさん、leylaさん、ありがとう♡

• #C@ファスビンダー西ドイツ3部作

本作はファスビンダーの西ドイツ3部作の2作目であり、1930年ジョゼフ・フォン・スタンバーグの「嘆きの天使」をモチーフにしているところは有名だ。

「マリア・ブラウンの結婚」では、戦中の結婚から成り上がり戦後の壊滅からの復興まで重ね、「ベロニカ・フォスのあこがれ」では、ドイツにおけるナチスの影響下における戦前の象徴と戦後の象徴、そして虚飾や搾取などが描かれてきた。

そして本作では、戦後再建後の西ドイツの経済格差、秩序と退廃が渾然一体となって表現されたカオスのさまは、まんま現代にもそのまま通じるところがみられるのが興味深い。

煌びやかな人工的な極彩色が画面を支配するファスビンダー流メロドラマが炸裂する。

ファスビンダー監督作品8作品目…。

『西ドイツ3部作』のひとつ…(他…『マリア・ブラウンの結婚』『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』)…。

今作はジョセフ・フォン・スタンバーグ監督『嘆きの天使』をモチーフとしていますが…寧ろファスビンダーらしい新たな物語として新構築…。

ひとたびファスビンダーの手に掛かるとローラ(バルバラ・スゴヴァ)もこの上ない最高のビッチに…!!


1950年代…西ドイツ、バイエルン州の小さな村…ここでは地元の建設業者シュッカートが幅を利かせ、不正な利権を享受…彼の情婦であるローラも娼館で踊り子をしながら奔放な生活を送っていました…。

ある日、この町に清廉潔白な建設局の役人フォン・ボーンが新局長として赴任することとなります…。

ローラはシュッカートの情婦という立場に飽きたらず、自らを偽りマリア・ルイーズという名で淑女を演じフォン・ボーンに近づきます…そしてまんまと彼は彼女の虜に…。

しかしある夜…フォン・ボーンはローラの本当の姿を知ることに…。



今作はファスビンダーの映像の中でも、特に色彩に拘りが見えピンク、ブルー、グリーン、イエローのトーンが鮮やか…ローラを映し出す時はピンクトーン、フォン・ボーンはブルートーン…ファスビンダーならではの美意識を魅せつけます…。

また、娼婦ローラは黒のドレス、淑女マリアは白のドレスと視覚操作も巧妙…。



　　〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜









自らを「汚れている」と言うローラ…本心では道徳的な誠実さに憧れていたのか…しかしフォン・ボーンに娼婦であることを知られてしまった直後…彼女の態度は一変、自暴自棄になったかのように感情を剥き出しに歌い踊り狂います…。

しかしそんな思いも他所に…彼女はやっぱり「汚れて」いました…。

フォン・ボーンは当初血気盛んに正義を振り翳し、シュッカートの不正を暴こうと意気込んでいたのですが…周りの人間たちはそれを望んでおらず…資本という悪魔の囁きによって、遂には市場経済の論理に則り自らがお金でローラを買うことになるのです…。　

彼もまた、退廃のうちに飲み込まれ…ミイラ取りがミイラになるのでした…。

その後、ローラはフォン・ボーンとの結婚により名声…シュッカートの情婦として娼館という資本…その両方を手に入れるのです…恐るべし!! ビッチ!!

戦後、急速な経済成長を遂げた裏で…心の復興は不道徳に自らの資産に向いていきます…

その目的の為なら"愛"は容易な手段…。

哀切を極めたフォン・ボーンのラストの台詞…。

皮肉に満ちた監督の悲哀を感じます…。