イチロヲ

ステーション エージェントのイチロヲのレビュー・感想・評価

3.5
奇異の目に晒されている小人症の青年が、ニュージャージー州の廃駅で孤立した生活を送ろうとする。孤立主義者となった青年の自己実現を描いている、ヒューマン・ドラマ。

端的に言うと「人間誰しもが閉塞感を抱えながら生きていること」を語っている作品。田舎でのスローライフを基盤にして、主人公と接触する人々の悲喜を描いていくスタイル。終始面倒くさそうに応対する主人公が、映画的な面白さに繋がっている。

息子を亡くし夫とも別居している女性画家と、父を介護しながらキッチンカーに従事するメキシカンの青年。この二人が、主人公と親しくなっていく。異なる性格をもつ男女3人組が、三者三様となる「閉塞感を処理する方法」をもっているところが醍醐味。

他人との接触を避けていた主人公が、仲間と一緒に悲喜を分かち合いながら、能動的に行動を起こし始める。姿かたちと境遇が異なっていても、心の奥底では運命共同体の仲間であるということ。心のスキマを埋めてくれる、優しさに包まれた作品。
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