ウィーンでレントゲン技師として働くアンナ・マリア(マリア・ホーフスタッター)は、妹テレサのようにヴァカンスに出かけるでもなく、イエスのために夏休みの日々を過ごす。讃美歌や鞭打ちの苦行、聖母マリア像を携えての布教活動、それだけで休暇を過ごすにはありあまるほど。敬虔で頑固なカトリック教徒の彼女にとって、パラダイスはイエスと供にある。ところがある日、車椅子でエジプト人イスラム教徒の夫ナビルが2年ぶりに家に戻り、彼女の日常は狂い始める。イエスを理想の男のように慕い敬いながら、夫には無慈悲な態度をとる妻にナビルは怒りをあらわにする。アンナ・マリアのパラダイスは、宗教と結婚の両方に亀裂の入った夫婦の争いの場と化してしまう。母・娘・叔母の3人の女性の歪んだ愛をユーモラスに描いたパラダイス3部作2作目。

　映画の主人公はおそらく「強迫性障害」という心の病に冒されているのだが、本人はそのことにまったく気付いていない。本人が良かれと思ってやっていることでも、周りの人間からすればはた迷惑な行為である。そういう他者と自分との感覚のずれを信仰心で埋めようとするのは土台無理なのだ。仕事の無い休日に戸別訪問し、キリスト教を勧める場面は全てフェイク・ドキュメンタリーの手法で撮影されている。相変わらずカメラワークは美しく、どのシーンも背景がきちんと絵になるように、納得の行くまでフレームを覗いたことが伺える。主人公のマリア・ホーフスタッターは、ハネケ『タイム・オフ・ザ・ウルフ』のあの女性なのだが、○○系○○人というルーツの複雑な家系の多いヨーロッパにおいては、キリスト教徒とイスラム教徒の夫婦なんて、おそらく星の数ほどいるに違いない。結婚よりも宗教を重んじたならば、互いの宗教観の違いで即離婚でもおかしくない。大体この夫婦は、夫ではなく妻が社会に出て働いている。そこに家庭内宗教対立の根深さが垣間見える。

パラダイス3部作の2作目「神」。

こちらは題の通り宗教が題材なのだけど、なかなかに狂ってました笑
（褒めてます）

レントゲン技師として働くアンナ・マリアは、狂信的なカトリック教徒。
「乱れた性行為に溺れる人々」を嘆いていて、罪深き人たちの代わりに自分に鞭を打ち罪を浄化させている、危ない人です 笑

にも関わらず、帰宅途中に公園で乱行している男女を目撃した時は「やめなさい！」と言うでもなく「まぁ、どうしましょう。嘆かわしい」って感じで、その場から立ち去ろうとしない笑。
『家政婦はみた』かよ。

その日の夜、寝る間際に変な気分になっているし、彼女の信仰は本物なんだろうかと疑問に感じた。これは、監督の皮肉なのかな？

そんなアンナの元に、ある日、別居中の夫がいきなり帰宅（夫がいたことにびっくり）。車椅子に乗る夫は、ムスリムのギリシャ人。ややこしくなる雰囲気満々です。

異様に信仰深くなってしまった妻の生活を非難し、時にDVまがいの暴力を振るうことも。夫の行動はかなり身勝手ですが、妻の愛が消えてしまった虚しさからの行動なのかな……？
この2人の間に何があったんだろうと、想像が膨らみます。

全体を通して、人間の嫌な部分に焦点が当てられているので「見てはいけないものを見てしまった」という不思議な気持ちにさせられます。

でも、この「神」のオチは良かった。
あの結末じゃなかったら、次の「希望」を観ずに終わったかも💦


以下、印象に残ったシーンです。

＞移民地域の人たちに凸して信仰の素晴らしさを伝えるも、ものすごく押しつけがましい。ラスト付近に出て来たロシア人女性とは、キャットファイトを繰り広げてた。あの喧嘩、なかなか見応えあります笑

＞アンナがキリストの像を抱きながら、マスターベーションをしていて気味が悪かった

＞預かっている猫を、「衛生面が心配だから」と暗い地下室に閉じ込めてる。許せない

＞布教活動に訪れた家でマリア像の置き位置まで細々と指図する。猫の件もそうだけど、かなりの神経質なのに自分のウエイトコントールは全くできていない。
これも監督の皮肉だろうか？

ゴリゴリのクリスチャンおばさん対車椅子じじい。
殴り合いが生々しくて引いた。ラストは割と救いなくて悲しい。神なんていないのか？