前作からの安定した作風とエスカレートするトム・クルーズの実録アクションシーンが何度観ても面白いです。クリストファー・マッカリーの脚本と自身の演出で、それがさらに際立っています。この傾向は次作以降も継続しているので、まぐれのようなものでないこともはっきりしています。
この作品の特徴は、女性であるエルサを物語の中核に設定したことだと思います。このシリーズのヒロインたちは、イーサンのサポートメンバーや恋人、ワンポイントの敵役などばかりで、さすがに現代的な価値観にはマッチしなくなっていました。しかも優秀なエージェントであるエルサは、所属する組織のポジションが不安定で、この物語のイーサンの境遇とも相まって、2人の関係性を奥深いものにしています。とてもうまい人物設定だと思いました。
これまで短期決戦の物語ばかりでしたが、この作品では“6か月後”という時間軸の飛躍がめずらしいです。世界中の元諜報員で組織されたシンジケートの大義などは深掘りされませんが、IMFが解体された以降にテロが頻発したという設定が必要だったのでしょうか。CIAの本体やMI6にも優秀なエージェントがいただろうに…。
冒頭の離陸する輸送機にしがみつくイーサン(というか「トム・クルーズが本当にやってる」という視点でしか観られない)も1つのハイライトですが、中盤のバイクチェイスはなかなかの迫力です。ノーヘルで超高速のまま転倒したイーサンは即死でもおかしくありませんが、ほとんど無傷ですぐにミッションを再開します。こういう荒唐無稽な描写も許容できるところがこのシリーズの魅力でもあります。
ちなみに、冒頭のレコード店で登場するIMFの連絡員のような女性がめちゃくちゃ魅力的で、もっと活躍してほしかったです。ハーマイオニー・コーフィールドというイギリスの女優さんのようでした。このシーンで使用されるレコードプレイヤーに“Technics”のロゴがあって、なんだか嬉しかったです。