終始漂っている「嫌な予感」がラストに最大級の威力で襲ってくる。所謂ネタバレ厳禁案件なんだろうけど、ただ「映画を楽しむため」という理由で伏せていい情報だと私は思えない。軽い気持ちで見ると後悔するし、人によってはかなりダメージを喰らうと思うので、以下も決定的な事は書きませんがこれから鑑賞される方はご注意ください。
描かれているのは大自然の中のちょっと不思議で素朴な生活なんだけど、映像としての素朴さは一切ない。映るもの全てが象徴的で隙のないほどみっちりとした作為性を感じる。空も木も土も水も風も光も不自然なほど美しくて、何もリアルな手触りが感じられない。不穏な静寂に包まれたシュルレアリスム絵画みたい。でもその強烈な違和感に引き込まれる。人類が滅亡し文明が朽ち果てた後に、最後に残されたAIが作った映画みたいだな、と思った。
羊と昼寝/二つに分かれる道/壁に写す写真/葉っぱのコラージュブック/食べられた夕日/黒い郵便配達夫/二度の決闘/赤い星のお墓/木に落ちる雷/寄り添う洗濯物