晴れない空の降らない雨

ナイトクローラーの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.0
私的な話になるが、最近ぼんやりと考えていたことを明確にしてくれるような話だった。

ウンチク話から始めると、心理学・脳科学・遺伝学では長らく「サイコパス」と呼ばれる人間について研究してきた。簡単にいえば「恐怖を感じない」「他者への共感を欠く」「行動を抑制しない」といった、社会的な能力を欠いた人格のことだ。

もちろんフィクションなので、学術的定義にそのまま当てはまるわけではないが、本作の主人公ルイスは「サイコパス」に近いと言えるだろう。

当然、基本的にサイコパスは社会生活に支障をきたしやすく、犯罪を起こすこともある。もっとも、サイコパスには遺伝要因と環境要因が関わっており、遺伝的にサイコパスでも養育環境次第では、社会に適応できる。
それどころか、経営者などに昇りつめる成功者の脳を調べると、サイコパスが少なからずいると言う。

この話を知って自分が思わざるを得なかったこと、それは「この競争社会の中では、サイコパスこそが適応者なのではないか?」ということだ。本作を観て、そうしたかつての疑念が思い出された。

なかでも、現代社会におけるサイコパス的な心性において、一番重要な点は「他者を自分のための道具としか見ない」ということだと思う。まさにルイスはそのような存在として描かれている。