話がちゃんと分かってないけど、たぶんあらすじとしては……
倫理観のイカれたぶっ飛び夫婦が、週末を利用して田舎にとある殺人を犯しに行くけど、その過程でめちゃくちゃな出来事に遭遇しまくるっていうお話?
今まで観たゴダール映画の中では一番ストレートに楽しく、初めて親近感を覚えました😁こういうブラックユーモア全開のものを観ると、やっぱりゴダールのやってたあれこれって高尚なる映画芸術の探求などではなく、いい意味での悪ふざけ大会だったんだな~という納得感を勝手に覚えました(もっともそのふたつは容易にイコールで結べそうだけど🧐)。
★★あくどいギャグと、観てるこちらへの嫌がらせみたいなシーンが満載!
・不倫している奥さんのエロい体験を旦那が(欲情しながら?)根堀り葉堀り聞き続ける、序盤のシーンからしてもう退屈……! 延々たる長まわし。不協和音みたいなBGMが定期的に耳を聾せんばかりにデカくなり、肝心のエロ話が聞こえなくなる。これって日本語だと字幕あるから内容わかるけど、本国版だと話の内容が聞き取れなくなるっていう演出なのかな、どうなんでしょう?
・有名な大渋滞のシーンがやっぱり一番よかったです。事故の影響でウイークエンドに出かける車が長蛇の列を成してて、そこを夫婦の車が強引に突破していくさまをこれまた死ぬほど果てしない移動長まわしで撮ってくっていう。一生分のクラクションを聞いた気分🚗🚌🛻🚚🚙正直、いつまでこんなんやってんのよ……って気分にさせられましたが、車列の先頭まで行くと残酷きわまりない絵面が見えてきて、それと同時に渋滞から抜け出せた解放感に謎の爽快なカタルシスが生じててヘンテコにすごかったです……。
・あとは現代フランス社会風刺を織り交ぜた人死にの多いブラック・ギャグ・エピソードが次々つながれてく感じ? たとえばゴダールって犯罪劇をやってても映画全体ではそのストーリーとは別の何かに目を向けてるって感じがするのですが(『気狂いピエロ』とか『はなればなれに』とか)、これは全体がブラックコメディ、やってることも暴力と殺人ということで、パッケージと中身がパッチリ合ってる作品は初めて観ました😊
・森の女の子と道化師? みたいなとことか、田舎の音楽家の演奏を聞くカメラグルグル~なとことか、奥さんが通りすがりの男に襲われるけど旦那が助けないくだりとか、理不尽でよく分かんない話が多いです。神の子を名乗る男が乗り込んできたり、ひとりよがりな運転してたら大事故起こして画面のコマがずれるギャグとかもあったような。
でもこの主人公夫婦って、元々殺人志願者だし倫理観もめちゃくちゃだしで、言っちゃえば死んでもしょうがない人たちなので総じて心は痛まない😇
・もっとも、惜しむらくというかたぶんゴダールが根っからのギャグ映像作家じゃないからなんでしょうけど。やってることは終始酷くて楽しいけど映像にそこまでキレがないので、ゲラゲラ笑える映画までにはちょっと至ってないかなぁというのは正直ありました。しかし作り手の目標が那辺にありしか、自分にゃ分かりませんけど。
・自分は頭から3分の2ぐらいまでが好きで、終盤は正直息切れ感があったかなぁ。しかしこれも作った人の意図とこちらの期待の齟齬の問題で、終盤はそんなサービスしません、酷い目にあってる夫婦ともども観客もこれでも喰らえ! って感じであんまり楽しくしてないのかも🇫🇷
・あとは文脈依存のインテリギャグみたいな、この人お得意の意味深長ゼリフ群が、いい意味で腐臭を発してて自分はむしろ好きでした(いい意味とは?)。
これも個人的な考えですけど、直球現代社会風刺的なセリフとか、映画に関するメタゼリフって、そのまま作中に入れても基本的には力を持たない気がします。なぜならフィクションに溶け込んでない言葉って浮いて見えちゃって鼻につくから……。そういう言葉はこれにもいっぱい入ってるんだけど、この映画自体がある意味一貫してくだらないおかげでそうした生硬なセリフがわりとトーンにマッチしており、結果的にギャグの一部になりおおせている、感じがしたのも親近感を覚えた理由かも。後半の西洋中心主義的な考え方を批判するような展開も、それまでの過程があまりにめちゃくちゃだからあんま真摯に聞けないなぁ……みたいな気持ちになって、それがむしろあるべき視聴感覚に感じた、とでも言いましょうか。
……という感じでなんだかよく分かんない映画でしたが🌀🌀🌀、残忍な悪ふざけが手を変え品を変ええんえん繰り返される感じは好きでした。結局自分が分かったことは、悪い冗談としての暴力はただただ楽しい、ということだけ……。