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Red Psalm(英題)のrebのレビュー・感想・評価

Red Psalm(英題)(1972年製作の映画)
3.3
「新文芸坐シネマテークvol.48/驚天動地_。ヤンチョー•ミクローシュ」で鑑賞。

19世紀末ハンガリーの村では、農民たちが悲惨な生活環境を強いられていた。
平原で踊りと音楽を楽しんでいるかのような農民たちだが、それは彼らの反乱であり蜂起だった。
群衆に交じっていた兵士たちは、やがて彼らを取り囲み、大虐殺が始まる。

カンヌで監督賞を受賞した本作は、87分で26ショットの長回し。
1500人ものエキストラを使った、壮大な農民の心の叫びミュージカル。

祭りのように盛り上がる農民たちによる歌や踊り、そして女性のヌード。
今まで観たヤンチョー作品は、支配や辱めのため服を脱がされていたが、本作では美しい女性たちは自ら服を脱ぎ捨て、自由や解放を示す。
彼女たちにイケメン将校は同情し、仲間に撃たれる。
地主は自ら命を絶ったかのように死ぬ。

しかし死者は遂げられなかった思いを果たすかのように、ムックリと起き上がる。

大寺さんによると、民衆の反乱からハンガリー王国がオーストリア帝国から独立しようとした、1848年のハンガリー革命を参考にはしているが、史実や善悪をそのまま描いているのではなく、鳩や赤いリボンなど、その表現は寓意的でファンタジーでもあると。

反乱を起こす農民たちの表情に悲壮感は無く、楽しげで余裕さえ感じられるのだが、その歌に込められた思いは、激しく重い。
生きる喜びを身体全体で表したような楽しげな祭りの後に、訪れる悲劇との落差に絶望した。

大寺さん、次回のヤンチョー特集で、できれば「ハンガリアン狂詩曲」を上映していただきたいなぁ。
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