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青春残酷物語の針のレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
3.8
大島渚の初期の代表作かな。1960年を舞台に、若き大学生男女のめっちゃくちゃベタでありふれた無軌道・恋愛・青春・模様を描いていく映画。……に見えるけど当時はこれが新世代として見えたのかもしれません。
ベタっつっても現実のじゃなくて、もちろんフィクションにおけるそれね。惚れた腫れた、ヤッたヤられた、金とセックス、喧嘩と軽犯罪、刺激的な生活への憧れ……。その場その場の気分に流されやすいふたりをあんまり突き放す気持ちにはなれないのですが、相互にスポイルし合ってるように見えなくはない😀

中盤過ぎまでは世代論だの人生論だのを語るセリフ群がわりと生硬で浮いてるかなーと思って観てました。が、終盤までいくと演出に迫力が生まれて、そうしたセリフがちゃんと象徴性まで高められてる感じがしていいなーと。特に後から登場する第二カップルと主人公ペアとの落差から、世代論/時代論みたいなものが描かれ、この社会に生きる人間の普遍的な在り方みたいなものが浮かび上がるあたりの手つきの鋭さ! 一カ所ガシッ!とこころを掴まれるシーンもあって、けっこうよかったです。

○撮り方もなんかスタイリッシュで巧いかもー。シーンの切り替えが急でもちゃんと話は分かるっていうそのへんのキレね。
ありがちだけど、濡れ場を示唆するシーンとか。カメラが横移動するにつれてベッドに寝ているふたりの姿がだんだん見えてきて、それまでの出来事がおのずと分かるみたいな、よくあるシーンもガッチリしていてよかったです。

○この世代、この時代の特徴みたいなものは、遙かのちまで生まれてこない自分🚼にははっきり分からないところはありますが。『太陽の季節』とかがちょい前か。1960年前後って、戦中に生まれはしたけど敗戦後の自由な空気の中で育った子たちが、思春期を迎えて大人になった頃なのかな。それによって上と下の世代の考え方の違いが大きくなった頃……というふうに作り手は捉えているようで、序盤の安保闘争とか全学連は、それを端的に示す描写であるような。

おもしろかったとこについては後はコメントに。
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