【墓標・墓碑/X-MENウルヴァリン三部作の③/X-MEN&デップ祭り🔟】
「行かなきゃならないんだ。人の生き方は決まっている。変えられない。俺も変わろうとしたが、一度人を殺したものはもう元には戻ることはできない。正しくても人殺しの烙印を押される」
映画「シェーン」のセリフだが、「ローガン」の逃避行のホテルの部屋で引用される。
そして、ローガンがローラに最後に話す自戒の言葉にも似ている。
この作品でもそうだが、ローガンの登場にはやさぐれ感がつきものだ。
既視感がある。
この作品「ローガン」の公開は2017年。
トランプがアメリカ大統領選挙で当選した翌年だ。
暴力が蔓延したり、USAと連呼するオルトライトっぽいバカな若者が序盤に登場することや、チャールズと身を潜めるのが、トランプが密入国の標的にしているメキシコとの国境付近というのも象徴的だ。
マイノリティが滅びかかっている弱者に厳しい世界。
老人になって力も残っていないチャールズや、子供を保護しようとする人、善良な一家を亡き者にしてしまうというのも、実は、現代を象徴的に示しているんじゃないかと思う。
ウクライナやガザは、中国の少数民族の弾圧は、ミャンマーの少数民族の弾圧はどうだろうか。
トランプが、プーチンが、習近平が、ネタニヤフが目指しているのは、知恵とか協力とかではなく、脅迫や暴力が蔓延るこんな世界ではないのか。
そんな危機感があったに違いないと思わせられる。
この作品を、ウクライナ侵攻が続き、ガザはのイスラエルの攻撃が継続し、アメリカ大統領選挙が控える2024年の夏にに見返すのもなんか因縁めいている気もする。
子供のミュータントたちの逃亡先は、アメリカを脱出してカナダというのもどこか皮肉だ。
チャールズの死。
ローガンの遺伝情報を引き継ぐローラ
逃避行の旅のなかで徐々に心を通わせるローガン(はじめっから仲良く出来ないのもローガンらしいけどね)
そして、かつての強者だったウルヴァリンが自らの命を投げ出して未来のある子供達の命を繋ぐ。
希望とは、このような犠牲によってしか繋ぐことは出来ないのか。
殺伐とした世界に何かを問いかけようとした作品のように思える。
墓標は十字ではなくX。
そして、刻まれることのない墓碑はシェーンのセリフだ。
ミュータント的なアクションはやや控えめだが、とても示唆的な作品だ。