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逃げ去る恋のBOBのレビュー・感想・評価

逃げ去る恋(1978年製作の映画)
3.8
フランソワ・トリュフォー監督による"アントワーヌ・ドワネルの冒険"シリーズの5作目にして最終作。

校正者として働く30代半ばのドワネルが、妻クリスティーヌと離婚し、初恋相手コレットと再会する。

「恋のサラダ」📕🖋️ 

アントワーヌ・ドワネルの半生及び恋愛遍歴を振り返る見事なシリーズ完結編。アントワーヌ・ドワネルの処女作である自伝的小説に沿って、過去4作の名シーンが回想シーンとして次々に挿入されていく。ノスタルジーに浸らずにはいられない。

小説家アントワーヌ・ドワネルを主人公とする映画内映画のような感じで、過去の恋と現在の恋が交差しながら進行していくストーリー構成が面白かった。約20年にわたってアントワーヌ・ドワネルを演じてきたジャン=ピエール・レオをねぎらいたい。

両親に見放された幼少期を経て、職と女性を転々とし続けた半生。アントワーヌ・ドワネルには、愛情不足で育った人の特徴がいくつも伺える。恋人の信頼を裏切るような行為を繰り返すなど、自分本位の恋愛に走ってしまう根本には、自分は愛される価値のない人間だという悲観的な考えや、愛する人に裏切られるのが怖いという想いがあるように思う。女性側からすると幼少期の不幸の償いを求められてもただの迷惑でしかないのだが、それでも自然と肩入れしてしまう。最後の告白はその場しのぎの嘘や誤魔化しではなく、本心から出た言葉だと信じたい。アントワーヌ・ドワネルの今後の成長と幸せを心から願うばかりである。

それにしても、コレット、クリスティーヌ、サビーヌと、"アントワーヌ・ドワネル・クラブ"は本当に美人揃い。本作から初登場の"今カノ"サビーヌがめっちゃ可愛かった。

エンディングが絶品。「逃げ去るものばかり僕は追いかける。」など、レコードから流れる"逃げ去る恋"♪の歌詞が、アントワーヌ・ドワネルの心を的確に言い当てていてグッと来た。

シリーズのグランドフィナーレに相応しく、過去作の登場人物が再集結する本作だが、『大人は判ってくれない』にちらと登場した母親の愛人まで出てきたのには驚いた。

「航海」「先に立たず」

375
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