土方巽に影響を与えた前衛舞踏家・大野一雄主演の初映画作品。監督は当時のアヴァンギャルドアーティストを追っていたドキュメンタリー作家、長野千秋。
白塗りの大野一雄が奇怪な衣装をまとい、空き地、ボイラー室、林、墓場、寺などで即興的な前衛パフォーマンスを繰り広げる。。。
アウトサイダー・アート映画の源流といった趣だった。ストーリーは無く、イメージカットを連ねている。前衛舞踏として優れてるかどうかは素人の私には語れないが、アングラなムードだけは好み。
土方巽は”土着”のテーマがはっきりしているが、大野一雄の本作には加えてボイラー室や塩ビの赤ちゃん人形など近代的な小道具が配置されている。怪奇系パンクバンドPVのイメージカット集のようでもある。
大野一雄が当時63歳だったことを知り、アングラ志向な自分としては勇気づけられる思いがした。
【ロケ地】
横浜の自宅周辺、大野が体育教師をしてていた捜真女学校のボイラー室、猿島(東京湾の無人島)、宝生寺(横浜市)
※大野一雄(当時43歳)の戦後初公演(1949)を見た土方巽(当時21歳)が「不思議な舞台に出会った。シミーズをつけた男がこぼれる程の抒情味を湛えて踊るのである。しきりに顎で空間を切りながら踊る、感動は長く尾を引いた」と感想を述べている。