垂直落下式サミング

ペンギン・ハイウェイの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.6
町中に突如としてペンギンが現れた!ペンギンたちは、住宅地から公園、広場や、歩道、民家の庭、山道を闊歩して、どこかに消える。
この不思議な現象の鍵をにぎるのは、利発なアオヤマ少年が憧れている歯科医院のお姉さん。お姉さんが缶ジュースを放り投げると、なんと、その缶は空中でペンギンに変わる。お姉さんはいったい何者なのか?ペンギンの謎を調査する少年と謎のお姉さんの交流を描いたSFミステリーがはじまる。
頭のいい子供が背伸びして大人ぶった言葉遣いをしているのが可愛らしい。主人公のアオヤマくんはそんな小学生いるかってくらい利口な少年。彼が言うように将来は偉くなるんだろうが、それを鼻にかけないのがいいところ。
彼と一緒になって冒険をするトロいが憎めないメガネの友達と、途中から仲間に加わる勝ち気な優等生の女の子が一緒に遊びながら仲好くなっていくのが、子供向け作品らしくて好き。
前半で、アニメーション作品ならではのフィクショナルな冒険と、子供たちの子供らしい挙動を描いておいてから、後半では、パニック映画としての意味合いを増し、社会的に無力な子供という立場をぐっと強調していくストーリー展開が見事だ。
誰もが幼いひたむきさを思い出せる素敵でミステリアスなファンタジー作品で、子供のころの未知への興味や、年上の女の人に憧れた気持ちがよみがえる大満足の夏休み映画でした…とすると感想としては綺麗だが、本作を心の歪んだ大人の男性がみた場合、男の夢のようなおねショタ映画だということに言及しなければ嘘になるだろう。
男は、たったひとりの聖母をずっと待っているんです。あの日、あの場所に、もう一度帰りたいと願っているんです。彼女がいようが奥さんがいようが、今も昔も絶対に手の届かないところにいるミューズへの思いを、ずっと心のどこかに持ち続けているんです。
前に進もうとするのは過去のため、努力するのはいつかのあの人に認められるため、そして、くじけそうなとき自分を前向きにしてくれるのは、触れることすらできなかった、あのおっぱいしかない。
こんな価値観に強い共感を抱いてしまう、自分が嫌いだ。