30年もの間、"プレジデント"と呼ばれ崇められている村長によって納められている村・ランガスタラム。
しかしその実態は、ソサエティによる不正によって村中が借金を負い、中には田畑を奪われ自殺者も出る苦しいものだった。
難聴の青年チッティは、久しぶり村へと帰ってきた兄と共に、ソサエティに村人の不当な借金を訴え出るが...
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「RRR」のラーマ役、ラーム・チャラン主演の映画。
「RRR」でチャラン君のことが気になった私のような人間は、どうするか悩む前にまず観て欲しい。きっともっとインド映画やチャラン君のことが好きになるはず...
フライヤーに載っているチャラン君の写真がひたすら笑顔でかわいいものばっかりだったので、てっきりほわんとした性格の弟かと思っていたら、結構血の気の多いヤンチャっ子だった。高学歴の兄と不良の弟という感じ。でもお兄ちゃんが大好きな良い子(兄が帰ってきた時のやりとりなんてバカップルみたいだった)。
基本的に誰に対してもガルガルしてる野犬なんだけど、一度味方だと思えば子犬みたいに甘える、そんな生き物だったので、あまりにモフかわい過ぎて「なんだこの生き物は〜!!」と思わず劇場で悶えて地団駄を踏みそうになった。
インド映画に出てくる腕っぷしの強い主人公って、冷静に考えるとだいぶ輩でしかないんだけど、名誉や尊厳をかけての暴力が文化的(?)に肯定的なのもあって、なんか憎めなくてかわいい。
前半は一目ぼれした女性に自分が難聴であることを隠したくて、ひたすらすれ違うドタバタコメディ。ダンスもたくさんあるし、フライヤーに載ってるチャラン君のかわいい表情というのは、大部分この前半の恋するモフかわであったことが判明した。
プライドのせいで相手の女性にかなり酷いことをしてるものの、結局お似合いのバカップルだったのでまあいいか。でも、はっきりと「お前より兄の方が好き」と言っていたのはびっくりした。
後半は一転してかなり重めのシリアス。
権力にしがみつき続ける老害モンスターとの闘いって、日本の構図でも容易に置き換えられるので共感しやすかった。"名前"の重要性にもグッと来たし、前半に出てきたブラックコブラがメタファーの役割を担っていた点も良かった。
前半ではひたすらコメディ要素として働いていた難聴という設定も、後半は家族愛や曇らせ要素、そしてラストに繋がる伏線になっていてお見事。
敵に襲われた時、チッティがまだ少しでも動いてる敵がいれば、相手の口元や胸元に耳を寄せて、確実に息の根が止まるのを確認するまで殴り続けてたのが印象的で、その必死さと狂気に堪らなくなった。なんていうか、こういう業の深いお話って大好き。
コメディとシリアスのWパックも実にインド映画らしいインド映画で大満足だった。
↓↓↓以下、ネタバレメモ↓↓↓
MEMO---
・みんなで外に座ってお嫁さんのご飯を食べるシーン大好き
・兄が出てきた瞬間から「この兄はきっと死ぬ!」という直感が働いてずっとハラハラしてたんだけど、チッティがあまりに兄のことを好き過ぎて、実際にその時が来てしまった時にめちゃくちゃ泣いた。兄が助けを求めている声が聴こえないって言うのも、曇らせ過ぎて思わず「やめたげてよ〜」って心の中で叫んだ。
・時計を見た時のおばさんの心境と、その時計をチッティにあげた時の想いにも泣いた。あの瞬間、おばさんが真に村長に相応しい人だったと確信した。
・思い返すと、細かい伏線にいろいろグッとくる映画だった。プレジデントが兄に手を出さなかったのって、自分の体調が良くなかったからだったりする???