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ジェニーの記憶のmidoredのレビュー・感想・評価

ジェニーの記憶(2018年製作の映画)
4.1
グルーミングによる未成年者への性虐待を「成長した被害者」の視点で描き出す衝撃の啓発映画。

心底ゾッしました。なんですかこれは。淡々とした進行が逆に怖い。背伸びしたい子供が流される過程や、周囲の人がうっすら気づいていながらも止められない構造などもリアリティがあり、主人公と同じくらい呆然となりました。本気で鳥肌も立ちました。ほぼホラー映画です。

大学でドキュメンタリー制作を教えているジェニファー・フォックス48歳。ある日留守電で不安に満ちた母親からのメッセージを聴く。「あなたの昔の作文を読んだ。これは本当のことなの?早く電話をちょうだい」。歳上の彼氏との初恋を物語にしたことを思い出して微笑むジェニファー。しかし後日アルバムを見て愕然とする。当時の私はこんなに子供だったの…?

とにかく怖すぎます。『SNS 少女たちの10日間』と同じくらいゾッとします。こちらはフィクションとして被害者の経験を追体験させられる分、さまざまな感情の渦にぶち込まれました。実体験を元にしたストーリーとの事で痛ましい限りです。エンドロールの写真で念押しとばかりに奈落の底に突き落とされます。本物のジェニファー、あまりにも子供です。

13歳というと思春期に入り、当人としてはちょっと大人の仲間入りしたような気分でいても、当たり前のようにお母ちゃんの作った飯を食べ、お父ちゃんの稼ぎで買った服を着て、道端に鎮座する謎のウンコで爆笑できるくらい子供でしょう。掃除の時間にはホウキで延々ホッケーをして叱られるくらいの年齢な訳です。

そんなお子様相手に中年男が「君を本気で愛してる。これは恋愛なんだ」など、ホラも大概にしろという話です。玩具に対する執着は愛情ではありません。他者を性の道具にできる時点でかなり冷酷であり、他者と愛ある関係性を育めないナルシストです。それでも自我の弱い子供らは取り込まれてしまう。

本邦のインターネットでもJKだJCだと、あまりにも気軽に子供たちを性的に見なして喜んでいるポルノ中毒者と思しきコメントを見かけます。ああした連中もビルと同じような目つきで子供らを凝視しているのかと想像すると吐き気を催します。とりあえず全員刑務所にぶち込んでおいた方がいいのではと思うくらいにはしんどい映画でした。
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