施設から逃げ出したダウン症のザックと、人の獲物を盗んで逃げ出したタイラー。追われる2人のロードムービーは、ザックを追ってきたエレノアを加えて進んでいきます。
事前の期待値が高すぎたからか、荒削りで気になる部分がどうしても目立ってしまったけれど、忘れ難い素敵な作品でした。
実際にダウン症である主演ザックのために映画が作られただけあって、彼が見事に主役にハマっています。タイラーとのバディ化も楽しいし、エレノアを加えるとファミリー化していつまでもこのロードムービーが終わって欲しくないと思ってしまいます。
要所で流れるカントリーミュージックも素敵。牧歌的なノースカロライナ州の郊外の風景と旅して歩く2人にピッタリ。
『37セカンズ』も実際に脳性麻痺を抱える佳山明が主演で、これも役者に合わせた話になっていて障がいを抱える役者主演の映画として2本建てで見るのもいいですね。
ザックとユマ。見終わった後には2人を大好きになっているはず。
ただ、障がい者を描きつつ普遍的な物語に落とし込むことで、障がい者と健常者は変わらない人間であることを示して見せた『37セカンズ』に対し、本作はそこにはもう一歩及ばなかったと感じました。
障がいの内容もレベルも違うので並列に扱う方が悪いのかもしれないけれど、映画の荒削りな部分も含めてあともう一歩だけ足らなかったと思います。