ラブドールメーカーに勤めているが、軽蔑されるおそれからそれを打ち解けられないまま結婚まで至った夫・哲雄と、おそらくはそれに気づいていながら献身的に支える妻・園子の夫婦。
ラブドールのプチブームにともない仕事が多忙を極める中、夫婦仲がぎくしゃくしはじめたところで哲雄はある驚きの事実を知ることになる。
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タナダユキ監督は人々の愛すべきダメさを描くのが本当に上手い。今作夫婦の両成敗的なある件についても、個人的にはどうしても夫の方がだいぶアカン風に見えてしまうんです。それでも事の経緯や心情描写が丁寧なので、許せる範囲でおさまってるように思えちゃうのはまさにタナダ節といった感じ。
原作から携わった監督の、キャラクターへの愛情をしっかりと感じ、そしてそのような視点で登場人物と相対せる作家は大好きだと再実感しました。
それに応えるような高橋一生さんと蒼井優さんの演技はいつになくナチュラルなキャラクター。癖のある人物をさせたら一級品のお二人が、あえてと言わんばかりに史上最も癖のない等身大の夫婦を演じるからこそ、特殊な職業の設定が活きてきます。
「素晴らしい職人なのに"アダルト"という理由だけで讃えられることのないその技術に光を当てたかった」とインタビューとタナダ監督は語っていましたが、その目的を果たさんがため、アダルト題材の作品にありがちな「キャラクターのアクの強さ」を徹底的に排除しました。その選択肢をとれる監督のセンスはやはりとっても信頼できます。
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冒頭、久保田商会を訪れた際の相川さんと哲雄の初対面シーン。設定過剰な作品だった場合、相川さんをもっと偏屈にしつつ、哲雄を無礼なキャラに仕立て上げ余計な不和を描いてしまいそうなもんですが、今作はそうはしない。
きたろうさんの名演により相川さんの親しみやすさが冒頭からたっぷりと滲み出ており、だからこそ騙されて訪れたはずの哲雄がラブドールに一定のリスペクトを見せ入社を即決するのにも納得がいく。
その後2人が絆を深めていくシークエンスも非常に微笑ましい。ピエール瀧さん渡辺えりさんの魅力もあわせて、哲雄が仕事にのめり込むために必須である「職場の魅力」醸成をさらっとやってのけたのは流石でした。
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Rioさん素敵な作品ご紹介いただきありがとうございました。やっぱりタナダ作品の女性キャラは魅力的ですね!