トールキンが子供時代を過ごした牧歌的なイギリスの村の風景がそのまま、ホビット庄の風景に重なって思わず微笑んでしまう。4歳で父を12歳で母を亡くしたが、教育熱心だった母の教えで幼くして植物学やラテン語を習得している。孤児となるが周りの支えもあり奨学金を得ながらオックスフォード大学を卒業する。学生時代に出会った四人組で結社を創り親友となっていくさまは、まさにフロド、サム、メリー、ピピンの姿そのものだ。その後第一次大戦に従軍し、辛くも生還するが泥まみれの塹壕と死屍累々の荒涼とした戦場風景もまた「指輪物語」のあの古戦場跡を彷彿とさせる。この壮大なファンタジーの種子が作者の子供時代に芽吹き、さまざまな人生の辛苦を経験することで少しずつ育っていった、という現実のストーリーに胸が熱くなった。